[国会の地位]
41条 | 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。 |
42条 | 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。 |
43条 | 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。 |
51条 | 両議院の議員は、議院で行なった演説、討論または評決について、院外で責任を問われない。 |
■国会の地位
+■国民の代表機関
(1)「全国民の代表」(43条T項)の意義 自由委任か命令委任か
命令委任 | 民意の反映の重視から、代表者は選挙民の意思に法的に拘束されるという考え方。 |
自由委任 | 民意の統合の重視から、代表者は選挙民の意思に法的には拘束されないという考え方。 |
「全国民の代表」の意味(1)
国民は代表機関を通じて行動し、代表機関の行為が国民の意思を反映するものとみなされるという趣旨の政治的な意味。命令委任ではなく、自由委任。
[根拠]A.前文が「権力は国民の代表者がこれを行使」するとしていること。
B.43条が「全国民を代表する」し、「当該議員の選挙母体を代表する」とはしていないこと。
C.51条が代表者に免責特権を与えていること。
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「全国民の代表」の意味(2)
法的代表説 | 命令委任を肯定する代表観。直接民主主義の手段たる代表観説。 |
政治的代表説(従来の通説) | 「全国民を代表する」というのは、国民は代表機関を通じて行動し、代表機関は国民意思を反映するものと見做されるという趣旨の政治的な意味を有するとする説。この説は、国民のために行動するという意思さえ有すれば、君主あるいは貴族院も「代表」たりうるということになるという限界があるとされている。 |
社会学的代表(芦部説) | 「全国民を代表する」という規定における代表というのは、自由委任をもとにした代表である。しかし、国民主権原理の下にあっては国民の意思に全く拘束されないということは認めがたい。従って、ここにおける代表というのは、選挙により表明される国民の多元的な意思、社会の実勢力が国会にできるだけ忠実に反映されるという社会学的代表のことを意味するのだという説。 |
(2)党議拘束と自由委任原則との関係
議員への党議拘束が43条違反とはならない理由(通説)
必要性 | 政党は全国民の利益を反映していると考えられる。従って、政党の意見に従うことは、結果として全国民の代表として行動するということに他ならない。よって、党議拘束は民意を反映させるためには必要である。 |
許容性 | 43条の自由委任が禁止するのは法的責任である。この点、党議拘束には政治的責任であり、法的責任ではない。 |
(3)比例代表制における政党からの除名
比例代表選出議員の離党と議員資格
議席喪失説 | 比例選挙は政党を中心とした選挙であり、選挙民は党に投票したのだから、議員は議席を失うとする説。 |
議席保有説 | 自由委任の原則を強調し、たとえ、選挙民が党に投票したとはいっても、一度選出された以上は全国民を代表するのだとする説。 |
芦部説 | 議員の自発的な党籍離脱の場合にのみ議員は議席を喪失するとする説。 |
+■国権の最高機関
『最高機関』(41条)の意義 統括機関説、政治的美称説、最高責任地位説
政治的美称説(通説) | 国会が主権者である国民によって直接選任されるという点において、国民と結びついている。そして、国会は国政の中心的地位を占める機関であるということを強調する政治的美称であって法的な意味での最高機関ではないのだとする説。 |
統括機関説(総合調整機能説) | 国会が国権を統括する最高機関であるということを意味するとする説。この説では国会は他の二権に対して優越する機関ということになる。 |
最高責任地位説 | 国会は並列関係にある国家機関のうち一番高い地位にあり、「最高機関」は国家機関相互の関係を解釈する際の準則となり、権限所属が不明な場合には国会にあると解すべき根拠となるとする説。 |
+■唯一の立法機関
(1)唯一の立法機関の意義 国会中心立法の原則、国会単独立法の原則
「唯一の立法機関」の2つの意味
国会中心立法主義 | 国会のみが立法できるというもの。すなわち、およそ、国の立法はすべて国会を通し国会を中心に行われ、国会が立法権を独占するということを意味する。
明治憲法におけるような緊急勅令、独立命令などは認められない。 |
国会単独立法主義 | 法律は両議院の可決だけで成立し、他の機関は成立に参加しないということ。 |
(2)『立法』(41条)の意義
立法には形式的意味の立法と実質的意味の立法がある。41条の立法は実質的意味の立法を指す(通説)。
形式的意味の立法 | 国法の一形式たる「法律」(国会が制定する法規範)を制定すること。 |
実質的意味の立法 | 国会が制定すべき法規範を制定すること。この説は、41条の意味する立法が形式的意味における立法だとすると、内閣が独立命令を制定する権限を有したとしても、国会が唯一の立法機関であることと矛盾しないということを理由として挙げる。 |
実質的意味の立法の更なる分類
狭義説(帝国憲法下の通説) | 国民の権利を直接に制限し、義務を課する「法規」をいうとする説。 |
中間説 | 国家と一般国民との関係を規律する成文の一般的法規範を制定する作用を「法規」というのだとする説。 |
広義説(通説) | 一般的または抽象的法規範を定立する作用を実質的立法だとする説。 |
(3)措置法の合憲性 問題点、合憲となる要件 平等原則
+■国会中心立法の原則
(1)憲法の規定を直接実施するための命令の可否
(2)立法の委任の可否
@根拠、必要性、要件(特に罰則)
A政令の場合と条例の場合との差
B再委任の意義、可否、要件
(3)議院規則、裁判所規則と法律との関係
@法律で規則事項を定めることができるか
A法律と議院規則、最高裁判所規則の効力の優劣
+■国会単独立法の原則
(1)内閣の法案提出権
(2)地方特別法
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