[司法権]
■司法権
+■司法権の意義・範囲
(1) 司法権の意義:司法とは、具体的な争訟について、法を適用し、宣言することによって、これを裁定する国家の作用のことをいう。
(2) 具体的事件・争訟性の要件 意義、要件の存在理由
具体意的事件=法律上の争訟:当事者間の具体的な権利義務または法律関係の存否に関する紛争であって、法律の適用により終局的に解決しうべきもの。
裁判所=国民の権利.自由の保護を目指す機関
∴当事者間に権利義務に関する現実的・具体的な利害対立の存在が必要
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裁判所=法の定める手続(手続)、紛争解決基準(基準)に基づいて、法の専門家たる裁判官が主体となって判断し紛争を解決する機関。
∴「法律を適用することにより終局的に解決することができる紛争」でなければ社会に対する説得性なし
(3) 行政事件にも司法権が及ぶか ?
(4) 客観訴訟 意義、裁判所に司法権以外の機能を付与できるか、限界 ※事件性の要件と「法律上の争訟」との関係
客観訴訟と司法権(具体的事件性の要件)との関係
司法権の範囲外とする説(通説) | 客観訴訟は事件性の要件を欠いているとする。従って、司法権の範囲外である。この点は、裁判所法3条1項後段の「その他法律において特に定める権限」として認められている。 |
司法権の範囲内とする説 | 現行法上の選挙訴訟や住民訴訟のように法令が処分等の国家行為として具体化された段階にでは事件性の要件は実質的に満たされているとする説。 |
+■司法権の限界
(1) 自律権、裁量権に属する行為 国会の議事手続等
☆法律上の争訟にあたるけれども、事柄の性質上裁判所の審査に適しない
司法権の限界
憲法に規定があるもの | 国際法によって定められたもの |
国会議員の資格の争訟(55条)
裁判官の弾劾裁判所(64条)
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治外法権
条約による裁判権の制限
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(2) 統治行為論
@意義、認められるか、根拠
統治行為=判断が理論的に可能でも司法権の性質上判断ができないというような高度に政治性のある国家行為。
否定説 | 法治原則と司法審査の貫徹こそが憲法の要請であり、例外を認めることは出来ないとする説。 |
自制説(肯定説) | 統治行為は法律問題であると同時に、重大な政治問題。このような統治行為に対して司法審査を行なうことによる混乱が生じて収拾がつかなくなるおそれががる。従って、このような混乱を回避するために、法政策的観点から裁判所が自制すべきだとする説。 |
内在的制約説(判例) | 国民主権下では高度の政治性を帯びた行為の当否は民主的機関である国会・内閣の判断に委ねられているということを根拠として、統治行為は、国民主権下の権力分立体制における司法権の内在的制約にその根拠を求めるべきとする説。 |
A統治行為論適用の基準・範囲 cf.議員定数不均衡問題は ?
B問題となった事件 苫米地事件、砂川事件 cf.苫米地事件と砂川事件の統治行為論の違い
「苫米地(とまべち)事件」
第3次吉田内閣(昭和24年2/16 -昭和27年10/30)が抜きうち解散(1952年8月28日解散、第25回総選挙[1952/10/1]へ)を行ったことに対し、(1)解散が7条のみによったこと、(2)助言と承認という2つの閣議がなかったことは違憲であるとして、苫米地義三衆議院議員(青森全県1区、講和条約全権、片山内閣の運輸大臣、芦田内閣官房長官、1880-1959)が資格の確認等を求めた事案である。
(3) 部分社会の法理
@意義、認められるか、司法審査が及ぶか否かの基準
A問題となった事件⇒地方議会、大学、政党、宗教団体
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