[ 財 政 ]
■財政
+■財政民主主義
第83条 【財政処理の基本原則】
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。 |
(1) 財政民主主義(§83)の意義・趣旨
83条は財政を国会の民主的統制の下におくという財政制度の基本原則を定めている。これは、国家が活動するための財力は結局は国民が負担するものであることから、国民の代表機関である国会の民主的統制に服さなければならないとする原則といえる。
84条【課税】
あらたに租税を課し,又は現行の租税を変更するには,法律又は法律の定める条件によることを必要とする。 |
(2) 租税法律主義(§84)の意義
租税法律主義(§84)の意義=歳入面から財政民主主義を規定したもの。
(3) 課税につき法律で定める事項
課税要件、 課税手続の法定、 明確性が必要とされる。この点は罪刑法定主義と同様といえる。
(4) 通達課税の合憲性 「パチンコ球遊器事件」
+■予算
(1) 意義、法的性格 予算行政説、予算法形式説、予算法律説
予算=一会計年度における国の財政行為の準則(形式的意味の予算)
| 性質 | 59条・60条の解釈 | 国会の修正権 | 予算と法律の不一致 | 予算の拘束力の根拠 |
予算行政説(承認説) | 行政行為。予算に法的拘束力は認められない。 | 60条を適用 | 厳しい制限 | 生じる | 財政法 |
予算法形式説(多数説、芦部説) | 国法の一形式 | 60条を適用 | 争いあり | 生じる | 財政法 |
予算法律説 | 法律 | 59条1項をも適用 | 自由 | 理論的に生じない | 法律としての拘束力 |
(2) 予算と法律の不一致 予算は成立したのに法律が成立しない場合、法律は成立したのに予算が成立しない場合の処理
cf.不一致発生の原因
(3) 国会の予算修正権 修正に限界はあるか、減額修正・増額修正の場合
cf.一致予算案の可決義務があるか?
減額修正は可能か ?
通 説 | 財政国会中心主義の原則と憲法の中に国会の予算審議権を制限する規定はないということを根拠として、限界なく減額修正が可能だとする。 |
総額修正は可能か ?
予算行政説 | 否定説。法律が認めた場合でなければ出来ないとする。 |
予算法形式説 | すなわち予算案と予算との同一性を失わない程度の増額修正は可能(政府見解)。 |
予算法律説 | 通常の法律と同じく国会の修正権は無制限とする考え方。 |
+■公金支出の禁止
(1) §89後段の趣旨 公費濫用防止説、自主性確保説、中立性確保説
自主性確保説 | 89条後段を、私的事業への不当な公権力の支配が及ぶことを防止するための規定とする見解。 |
公費濫用防止説(通説) | 89条後段を、公的財産の濫費を防止し、慈善事業等の営利的傾向ないし公権力に対する依存性を排除するための規定と考える説。 |
中立性確保説 | 私人が行なう教育等の事業は特定の宗教的信念に基づくことが多い。従って、89条後段は、そのような私的事業への国家による財政的援助によって、特定の宗教や特定の思想信条が、教育等の事業に浸透するのを防止するための規定とする見解。 |
(2) 『公の支配』の意義
| 「公の支配」の意義 |
厳格説 | 人事・予算・事業の執行につき自主性を失うとみられるほどの強い監督に服していることをいうとする説。 |
緩和説(浦和地判昭61.6.9) | 自主性をもちながら、ある程度の監督に服するような場合も広く含むとする考え方。 |
体系的・有機的解釈論 | 法条の価値秩序的位置づけを検討して体系的、有機的に解釈すべきだとする見解。 |
(3) 問題となる具体例 私立学校への補助金、社会福祉事情への助成金
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