[地方自治保障の性質]

 続いて、地方自治について述べる。
 地方自治権の本質については、そもそも地方自治体は国家以前に存在するものであり、従って、自治体のもつ自治権は憲法以前において有する固有権であるとする見解がある(『固有権説』)。
 しかし、この見解は以下の3点から妥当ではない。
 第一に、自治権は国家の承認によって初めて認められたものであるから国家から伝来したものと考えるべきである(『伝来説』)。
 第二に、国家に帰属する主権は単一不可分であること。
 第三に、92条は地方自治の組織・運営につき法律に留保しつつ保障しているが、このことは固有権説とは矛盾する。
 それでは、一体、地方自治の本質をどのように考えるべきであろうか。
 思うに、地方自治を保障すれば地方の実状にあった施政を行え、権力を地方に分散させることで、権力の濫用を防ぐことができる。
 すなわち、地方自治制度の保障は間接的に人権保障を行うための、制度的保障と考えるべきである。
 そして、92条は地方自治制度の本質的内容たる、このような制度的保障の核心を「地方自治の本旨」として表現したものと解するのが妥当である(『制度的保障説』)。