[公務員の労働基本権]

公務員 ━━→ 国民の安全・福祉を担う → 一定の制約に服するのもやむを得ない
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         労働基本権=労働者の生きる権利  ━━┳━━┛
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         合理性を厳しい基準で ←━━━━必要最小限度の制約
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           LRAの基準━━━━━━━━━━┓
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 ※一般の労働者と同様の職務を行っている者           ┃
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          労働基本権を制約する合理性なし←━┛
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   争議権一律否定(国家公務員法98条2項)
      =違憲の疑いが濃い

 憲法は公務員関係という法律関係の存在を前提とし、その自律性の保全を憲法的秩序の構成要素として認めています(15条、73条4号)。従って、行政の中立性の維持という目的を達成するために合理的で必要最小限度の範囲内ならば公務員の人権を制限するということは憲法の許す範囲であるといえます。
 また、労働基本権・労働三権は労働者の生きる権利ですが、国民の利益との調和のため公共の福祉による制約は免れません。しかし、なんといっても労働者の生きる権利なのですから、その制約の程度は必要最小限度の制約に止まるべきということになるでしょう。
 そういうことを考慮に入れると、労働基本権・労働三権を制限する立法については、精神的自由に準じて、やや緩和されたLRAの基準である厳格な合理性の基準によって判断することが求められます。
 具体的には、目的の必要不可欠性を要求し、手段はLRAの基準で判断することになるでしょう。
 以上から、公務員の中でも一般の労働者と同様の職務を行っている人たちに関しては、労働基本権を制約する合理性は認めることが出来ません。つまり、現行の公務員法(国家公務員法98条2項など)のように争議権を一律に否定するということは違憲の疑いが強いといえるでしょう。