不特定物特定後に、その物を他の物に変更することができか?

 「種類債権の特定の制度っていうのは、債権者が他の物の給付をするのに必要な行為を完了したというようなときは、不特定物について履行すべき対象物を限定することによって債務者の負担を軽減するための制度だよね」
 「それ以上の制度ではないと言えるわ。つまり、特定することで特定物債権に変わるわけじゃないのよね」
 「とすればだよ、特段の事情がないかぎり、特定した物を債務者が他の物に変更したとしても問題はないね」
 「特段の事情っていうのは、債権者が特定したその物の履行に特に正当な利益を持っているというような事情ね」
 「そういう事情がないという場合は、債務者が同種同等の物に変更して弁済の提供をしたとしても、信義則上受領を拒むことはできないと言えるね」