[権利能力なき社団]

 「組合に関する民法上の規定は置かれているけど、いわゆる権利能力なき社団に関する規定は民法には置かれていないわ。」
 「凸凹小学校PTAとか、○○マンション管理組合とかのようなものが権利能力なき社団だよね。組合っていうのは個人目的のために一時的に契約で成立するものだから、この場合には当て嵌まらない。」
 「つまり、権利能力なき社団は組合とは別個に取扱うべきなのよね。そこで、この権利能力なき社団をどのように扱うのかってことだけど、個人を超えた団体としての実体を備えているのだから、法人と同じように取扱うべきよね。」  「そうは言っても、権利能力なき社団っていうのは法人そのものとは異なって主務官庁の監督、許可などの法の規制を経ていないから、まったく法人と同じ扱いをすることはできないよね。だから、できる限り法人に準じた取扱いをすべきっていうことになるね。」
 「財産の所有形態を考えると、権利能力なき社団には権利能力がないけれども、権利能力なき社団の構成員と権利能力なき社団の財産とは別に考えるべきだわ。
というわけで、権利能力なき社団の財産の所有形態は全構成員の総有ということになる。」
 「総有になるってことは各構成員の持分というのは認められないってことだね。
当然に、権利能力なき社団を構成している各構成員の債権者は権利能力なき社団の財産を差し押さえるなんてことは出来ない。」
 「そうね。それから、登記をする場合に問題があるわ。
権利能力なき社団の名義の登記を認める規定がないから。
そもそも、登記官に実質的な審査を行う権限はないし、権利能力なき社団の代表権を公証するような方法もないわけで、登記をすることは出来ないわ。」
 「そういう状況下で、もし、権利能力なき社団の名義で登記をすることを認めてしまうと、虚偽名義の登記との区別が出来なくなってしまう。
だから、例えば、凸凹小学校PTAの財産を登記しようなんて場合には、そのPTAの会長さんの名義なんかで登記するより他ないわけだね。」
 「会長さんの名前で登記をしておくと、ひょっとすると、会長の債権者がその財産を差し押さえるかもしれない。」
 「それはさぁ、そういう人を会長に選んだのが悪いってことになるね。
残念ながら。
そうそう、平成14年の4月から、町内会、同窓会などの非公益かつ非営利目的の団体にも法人格を認めるっていう『中間法人制度』が始まったよね。
これを利用すれば、そういうことはないね。」