[「第三者」(96条3項)の保護要件]
「96条3項における『第三者』の趣旨は、詐欺による取消の遡及効を制限することによって、権利を有効に取得できると信頼して取引関係に入った第三者の利益を保護することにわるわね」
「そうすると、96条3項で保護されるべき『第三者』というのは当事者と包括承継人以外の人で、詐欺によって作出された法律関係を前提として利害関係を有するに至ったものと言えるよね」
「なんだか、ややこしい言い回しだけど、要するに取消前に取引関係に入った『第三者』のことよね」
「まぁ、そういうことになるね。
ところで、その『第三者』には善意が必要だって規定されているけど、善意に加えて無過失まで要求されるのかっていうことが問題にされるね」
「確かに問題にはされてはいるけど、条文には善意としかないでしょ。だから、善意であればいいわけで、無過失まで備わっている必要はないと考えられるわね。 それに、そもそも、詐欺の被害者と外観を信頼して新たに取引関係に入った『第三者』との利益考量をすると、詐欺の被害者には帰責性もあるから、取引の安全を図るためにも『第三者』を保護すべきということになるわ」
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