[錯誤に基づく同意]

同意が真意に基づかない場合 ━━━━━━━┓
  ┃                  ┃
  ┗━→ 構成要件該当性は否定されない ┃
        ┃            ↓
        ┃     どの程度の錯誤が存在すれば同意の効果が
        ┃     否定されるか
        ┃     =犯罪類型ごと個別判断
        ┃      ┃
        ┗━━━┳━━┛
            ↓
        本当のことを知っていれば同意しなかった
        ≠ 構成要件該当性

 違法行為類型である構成要件該当性の判断というのは、処罰に値する法益侵害があるかどうかの判定のためのものだといえます。そうすると、本人が放棄した利益を刑法によって保護すべきかどうかということは構成要件該当性の判断の問題だということになります。この点、個人の自己決定権は最大限に尊重されなければならないということは言うまでもないことです。従って、個人的法益に関する限りにおいては、被害者の承諾があれば構成要件該当性は認められないというべきでしょう。
 しかし、重大な動機の錯誤のように被害者の同意が真意に基づかない場合においても、構成要件該当性が否定されるということは形式的に過ぎます。そうした場合には構成要件該当性は否定されないというべきです。
 反面、本当のことを知っていれば同意しなかったということのみで構成要件該当性をすべて認めるとするのも行き過ぎと言えるでしょう。
 但し、具体的にどの程度の錯誤があったのならば、同意の効果が否定されて構成要件該当性が否定されるのかという点については、犯罪類型ごとに個別に判断せざるを得ないでしょう。