■各種の会社の設立に関して、出資の確保のために法はどのような配慮をしているか。(39-1)
1、出資の確保が必要とされる理由
出資=社員が会社の業務目的を達成するために社員たる資格にもとづいて会社に対してなす給付をいう。
⇒物的会社においては、社員は間接有限責任を負うにすぎない(§200-1・有§17)。
従って、会社債権者としては会社財産のみが引当てとなることになる。
このため、物的会社においては会社財産の確保が要請され、資本制度が採用され(§284の2)、最低資本制度が規定され(§168の4・有§9)ている。
2、法的配慮
(1)物的会社(株式会社の例)
@最低資本金制度(§168ノ4)
株式会社においては、社員は間接有限責任しか負わない。従って、会社債権者を保護する必要性がある。こうしたことから資本制度が設けられたという趣旨からすると、会社に少なくとも一定の財産を保有するよう要求することが望ましい。
そこで、平成2年改正法で、資本の最低限度額として1000万円を要求し(§168の4)、有限会社についても、それまでの10万円を300万円に引き上げた(有§9)。
最低資本金制度以外にも、資本制度の趣旨から、
A金銭出資の原則(§168-II)
B全額払込主義(§170-II、§177-I)
C仮装払込の禁止
などが株式会社に関して規定されているのである。
また、資本充実の要請から、会社設立時には、発行予定株式すべてが引受られ、対応する財産が払い込まれなければならない。
このために、募集設立において引受がない株式については、発起人が共同で引き受けたものとされる(192条1項、D発起人・取締役の引受払込の担保責任)。
なお、この責任は資本充実のためであるために無過失責任であり、この引受によって発起人は株主となる。
さらに、払込確保の方法として、次のような手段が用意されている。
第1に、払込には払込取扱機関へ払込がなされ、保管証明書の発行を受けねばならない。
第2に、会社の成立後において、払込がないあるいは現物出資の未給付の株式がある場合には、発起人・取締役は連帯して弁済の責めに任ずる(192条2項)。
この責任も資本充実のためであるから無過失責任であり、払込んだ者は引受権者に求償権を有する。
第3に、払込がなされないことに任務懈怠があるような場合には、発起人、取締役、監査役は損害賠償責任を負うとされる。この責任は前の2つのものとは異なり、過失責任ではなく、任務懈怠に過失がある場合の過失責任と解すべきである。
(2)人的会社(合名会社の例)
⇒合名会社は無限責任社員だけの組織であるために、会社債権者を保護するために会社の財産を確保する必要性はない。
そこで、株式会社とは異なり出資に関して柔軟な規定を置いている。すなわち、
@労務出資および信用出資(§68 - §89、民§667-II)
A出資義務の私的自治
などである。
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