[問屋と損害賠償請求]

 問屋は、自己の名をもって、不特定多数の者(委託者)のために物品の販売または買入をする者をいいます(551条)。従って、委託者と取引の相手方は直接の契約関係には立たず、契約関係は問屋と取引の相手方に生じるということになります。  従って、債務不履行責任を追及することが出来るのは委託者ではなくて問屋だということになります。
 このように、債務不履行があった場合に、問屋が取引の相手方に対して債務不履行責任を追及できるとしても、実際に債務不履行による損害を被るのは問屋ではなく委託者であって、問屋の被る損害というのは履行担保責任(553条)が認められない限りはせいぜい手数料に留まります。この点からすると、問屋の追及できる損害賠償の範囲というのは手数料の範囲に留まってしまうのでしょうか。
 実はそうではありません。そもそも、債務不履行に基づく損害賠償請求権というのは本来の債務の履行に代わるものです。そして、その本来の債務について利害関係を持っているのは委託者です。従って、問屋は取引の相手方に対して債務不履行の責任を問うことの出来る地位を持っていることから、問屋が委託者のために取引の相手方に対して損害賠償請求をすることが出来ると考えられます。