[商行為の代理]

 商行為の代理に関して、取引の相手方が代理人が本人のためにするということを知らない場合には代理人に対して履行の請求が出来ると規定されています(504条但書)。
 この規定は本人のためにするということを知らない取引の相手方が不測の事態に陥るということから保護するための規定だと考えられます。従って、悪意あるいは過失のある取引の相手方は保護する必要はなく、この規定によって保護を受けることができるのは無過失の相手方のみということになります。
 また、504条但書は、504条によって顕名がなくても法律行為の効果は本人と取引の相手方に生じるのですが、取引の相手方が代理人が本人のためにしているということを知らないという場合には代理人に対しても同一の法律関係が生じるということを定めたものだといえます。
 この観点からするなら、取引の相手方はその選択に従って本人にではなく、相手方に対して履行の請求が出来ます。