[当事者の意義]
[定義]当事者:判決の名宛人となるべき者(形式的当事者概念)。
■当事者確定の基準
+■当事者が確定することによって判決の効力(§115-I[1])が誰に及ぶのかが決まる。
意思説 |
原告の意思を基準とすべきという説。
この説に対しては、原告の内心に関しては他の人は容易に知ることが出来ないという批判がなされている。 |
行動説 |
訴訟上、当事者らしく行動した者、あるいは当事者として取り扱われた者を当事者とすべきであるとする考え方。
この説に対しては、そもそも訴訟の追行は本人がなす必要がないことから基準が曖昧であるとの批判がなされている。 |
実質的表示説(通説) |
訴状に記載されているところを合理的に解釈して当事者を確定すべきであるという考え方。
そもそも、誰が当事者であるかということは裁判籍の判断などの前提であって、起訴提起後すぐに明確に確定する必要がある。そのためには、訴状の記載を基準として用いることが最も明確であると考えられる。
この考え方に関しては、死者を被告とした訴訟では具体的な妥当性を欠くという批判もある。しかし、当事者を確定するに関しては、請求の趣旨や原因などの一切の記載を合理的に解釈することが出来るため、この批判は妥当ではない。また、訴訟継承の規定の類推、任意的当事者変更などによって、具体的妥当性のある結果を導くことも可能である。 |
規範分類説(新堂) |
手続開始前と手続開始後とに分けて考える。
その上で、手続開始前においては表示説を採用すべきであり、手続開始後においては、当該紛争において当事者適格を有する者であって、それまでの手続の結果を帰属させうるに足るだけの手続に関与機会が与えられていた者を当事者とすべきという考え方。
意思説、行動説、表示説は当事者確定の統一理論を樹立しようとするものだったと言える。しかし、近時、規範分類説を発展させ、訴訟の時間的発展的要素を加味して当事者確定基準を考えようという考え方が多く見受けられる。 |
判例 |
大審院判決:意思説、行動説。
下級審判決:表示説。 |
[訴訟係属の発生時点]
訴状送達時点説(兼子,三ヶ月等多数説) |
原告が訴状を提出したとしても、被告に対して訴状を送達しなければ訴状は裁判長により却下(§138-II,§137-II)される。そして、訴状が却下されれば、事件は判決手続に付されることはない。従って、訴状提出の他に訴状の送達がなければ訴訟係属は発生しないという考え方。 |
個別効果説(新堂) |
それぞれの効果に相応しい要件を個別に決めるべきだという考え方。 |
■氏名冒用訴訟
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訴訟係属中に冒用が判明 |
判決確定後に冒用が判明 |
意思説 |
被告側冒用のケースに関して、
冒用者が当事者となる。
本人追認:本人に手続関与させる。
本人追認せず:訴え却下し、改めて被告人に訴状送達。 |
被告側冒用のケースに関して、
判決は有効であり、被冒用者に効果が及ぶも、再審の訴えが可能。 |
行動説 |
冒用者が当事者となる。
本人追認:任意的当事者変更。
本人追認せず:訴え却下し。 |
判決は無効。 |
表示説 |
冒用者が当事者となる。
本人追認:本人に手続関与させる。
本人追認せず:訴え却下し、改めて被告人に訴状送達。 |
判決は有効であり被冒用者に効果が及ぶも、再審の訴えが可能。 |
規範分類説 |
冒用者が当事者となる。
本人追認:本人に手続関与させる。
本人追認せず:訴え却下し、改めて被告人に訴状送達。 |
判決は無効であり、被冒用者に手続保障なし。 |
■死者を被告とする訴訟
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訴訟係属中に死亡したことが判明 |
判決確定の後に死亡が判明 |
意思説 |
被告側死亡のケースに関して、 相続人が不関与:訴え却下
相続人が関与:相続人が当事者となるため、当然に表示訂正。 |
原告側死亡:判決は無効。
被告側死亡:行動説と同様。
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行動説 |
相続人が不関与:訴え却下
相続人が関与:相続人が当事者となるため、当然に表示訂正。 |
相続人が不関与:判決は無効。
相続人が関与:訴訟承継を類推し判決は有効。 |
表示説 |
相続人が不関与:訴え却下
相続人が関与:訴え却下 |
相続人が不関与:判決は無効。
相続人が関与:訴訟承継を類推し判決は有効。 |
規範分類説 |
相続人が不関与:訴え却下
相続人が関与:相続人が当事者となるため、当然に表示訂正。 |
相続人が不関与:判決は無効。
相続人が関与:判決は有効。表示説と異なり、判決の更正(§257)は不要。
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■当事者の表示の誤記(表示の訂正と任意的当事者変更の限界事例)
■実体法上法人格否認の法理が認められる場合
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