地役権
地役権
一定の目的に従って、ある土地[要役地]の便益のために、他人の土地[承役地]を利用する権利[280条]。
地役権の設定
- 地役権は要役地の価値が増大する場合にのみ認められる。
- 地役権は要役地と承役地の存在が前提となる。
- 要役地と承役地は隣接している必要はない。
- 要役地は一筆または数筆の土地であることが必要。
- 承役地は土地の一部でも良い。
- 地役権者は土地所有者、地上権者等の物権者に限られ、賃借人は地役権者足り得ない。
- 地役権の存続期間には制限はない。
- 地役権を有償とする特約は第三者には対抗できない。
- 地役権は当事者の契約によって生じる。一方、相隣関係は法律上当然に発生する。
地役権の法的性質
- 地役権は承役地の所有者・用役権者との共同使用権者となる性質を持つ。
- 地役権に基づく物権的請求権は妨害排除請求・妨害予防請求ができる。
- 地役権の返還請求は認められない。
- 地役権者には承役地に対する排他的独占的権利行使を認める訳ではない。
地役権の付従性・随伴性
- 要役地の所有権が移転すれば、地役権も移転する。
- 要役地の所有権の移転の登記があれば、地役権を承役地所有者・承役地所有者の包括承継人・第三者に対抗しうる。
- 承役地の所有権が移転した場合、要役地所有者が地役権を主張するためには原則として登記が必要である[177条]。
- 道路の継続的使用の事実が客観的に明らかで、それにつき承役地の譲受人が認識可能ならば、譲受人が善意でも第三者には当たらない[最判平10.2.13]。
- 通行地役権の承役地が担保不動産競売によって売却された場合、①承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることが客観的に明らかであり、②それについて抵当権者が認識可能であれば、特段の事情がない限り、登記がなくても、通行地役権は売却によって消滅せず、通行地地役権者は、買受人に対して、通行地地役権を主張できる[最判平25.2.26]。
- 要役地上に地上権・永小作権・賃借権等を設定した場合、当該権利者は地役権を行使できる。
- 要役地上に抵当権・質権を設定した場合、当該権利の効力は地役権に及ぶ。
- 要役地の所有権移転に伴って地役権が移転する場合、および、地役権が要役地上の他の権利の目的となる場合、原則として承役地の所有者の承諾は不要。
- 要役地から独立して地役権のみを処分することはできない[281条2項]。
日本法制史/
民法
posted by N.T.Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.