留置権

留置権は物権であるから、留置権者は債務者のみならず、目的物の譲受人など、誰に対しても留置権を主張することができる[最判昭47.11.16]。

不動産が二重売買され、第二売買の買主が先に所有権移転を経由したため、第一売買の買主が所有権を取得できなくなったことによる、売主に対して取得した履行不能による損害賠償債権は、295条1項の「その物に関して生じた債権」には当たらない[最判昭43.11.21]。

「他人の物の売買における買主は、その所有権を移転すべき売主の債務の履行不能による損害賠償債権をもって、所有権の目的物返還請求に対して、留置権を主張することは許されないものと解するのが相当である。」[最判昭51.6.17]

不動産売買における売主の買主に対する代金債権は295条1項の「その物に関して生じた債権」に当たる。

賃貸借契約解除後に賃借人が賃貸物件に有益費を支出した場合、295条2項の類推適用によって、有益費償還請求権に基づく留置権を主張できる[最判昭46.7.16]。

賃借人は敷金返還請求権をもって家屋について留置権を行使することはできない[最判昭49.9.2]。


日本法制史民法留置権

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