債務の消滅

債務者が一個または数個の債務について元本の他、利息及び費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、費用・利息・元本の順に充当しなければならない[489条1項]。この費用・利息・元本の順は当事者の合意によって変更できる[490条]が、当事者の一方的な意思表示によって変更することはできない[大判大6.3.31]。

債務者が自己所有の不動産を代物弁済に供した場合には、不動産の所有権移転の効果は意思主義[176条]に基づき、原則として代物弁済契約成立時に生じる[最判昭57.6.4]。

債務者が自己所有の不動産を代物弁済に供した場合には、債務消滅の効果は、原則として、所有権移転登記手続の完了時である[最判昭39.11.26]。

「債務者が言語上の提供[口頭の提供]をしても、債権者が契約そのものの存在を否定する等弁済を受領しない意思が明確と認められる場合においては、債務者が形式的に弁済の準備をし且つその旨を通知することを必要とするがごときは全く無意義であって、法はかかる無意義を要求しているものと解することはできない。それ故、かかる場合には、債務者は言語上の提供をしないからといって、債務不履行の責に任ずるものということはできない」[最判昭32.6.5]

債権者があらかじめ受領を拒んでも、原則として債務者は口頭の提供をしてからでないと供託することができない。[大判大10.4.30]

債権者の代理人と称して債権を行使するものも、478条の受領者としての外観を有する者に当たる[最判昭37.8.21]。

定期預金債権の期限前払戻の場合における弁済の具体的内容が契約成立時にすでに合意により確定されているときは、当該期限前払戻は478条にいう弁済に該当する[最判昭41.10.4]。

銀行が預金者でない第三者を預金者と誤信して、第三者に対し、定期預金を担保とした貸付を行なったが、弁済がないため、当該貸金債権と定期預金債権を相殺した場合、銀行がこの事実について善意であり、かつ過失がなければ、478条の類推適用により有効な相殺となる。[最判昭2.6.22]

債権の二重譲渡における対抗要件で劣後する債権譲受人は、478条の受領権者としての外観を有する者に当たる[最判昭61.4.11]。

代物弁済は取引行為に含まれ、代物弁済を受けた債権者は、即時取得により、代物弁済の目的物の所有権を取得する。

弁済に代えて手形または小切手を交付した場合も代物弁済となる。これによって、債務消滅の効果が生じ、不渡りがあっても債務は復活することがない[大判大9.5.15]。債権者は損害賠償もできない。


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posted by N.T.Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.

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