行政代執行法

(昭和二十三年五月十五日)
(法律第四十三号)
第二回通常国会
芦田内閣
行政代執行法をここに公布する.

第1条 適用範囲

行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。

行政代執行法は、行政上の義務履行確保手段(強制執行手段のみ)についての一般法である。
行政上の義務の強制は原則として代執行の形式で行い、他の行政強制を行うためには、個別の法律を制定しなければならない。

代執行:=代替的作為義務の不履行に関して、行政庁又は行政庁の指定する第三者が義務者に代わって義務の内容の実現を図り、これに要した費用を義務者から徴収する強制執行。

「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務を求める訴訟は、法規の適用ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象になるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される」[宝塚市パチンコ条例事件;最判平14.7.9]
義務違反に対する課徴金の賦課は、罰金などとの刑罰と併科することは二重処罰の禁止を定めた憲法39条に反しない[最判平10.10.13]。

第2条 代執行

法律(法律の委任に基く命令,規則及び条例を含む.以下同じ.)により直接に命ぜられ,又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る.)について義務者がこれを履行しない場合,他の手段によつてその履行を確保することが困難であり,且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは,当該行政庁は,自ら義務者のなすべき行為をなし,又は第三者をしてこれをなさしめ,その費用を義務者から徴収することができる.

第3条 手続ー戒告・通知

前条の規定による処分(代執行)をなすには,相当の履行期限を定め,その期限までに履行がなされないときは,代執行をなすべき旨を,予め文書で戒告しなければならない.
② 義務者が,前項の戒告を受けて,指定の期限までにその義務を履行しないときは,当該行政庁は,代執行令書をもつて,代執行をなすべき時期,代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額を義務者に通知する.
③ 非常の場合又は危険切迫の場合において,当該行為の急速な実施について緊急の必要があり,前二項に規定する手続をとる暇がないときは,その手続を経ないで代執行をすることができる.

代執行をなすには、相当の期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、あらかじめ戒告する必要がある。

戒告・通知に関して、審査請求できる旨の規定は置かれていない。

第4条 証票の携帯・提示

代執行のために現場に派遣される執行責任者は,その者が執行責任者たる本人であることを示すべき証票を携帯し,要求があるときは,何時でもこれを呈示しなければならない.

執行責任者は、証票を携帯し相手方からの要求がある時には呈示しなければならない。なお、相手方からの要求がなければ呈示しなくともよい。

第5条 費用の徴収

代執行に要した費用の徴収については,実際に要した費用の額及びその納期日を定め,義務者に対し,文書をもつてその納付を命じなければならない.

第6条 費用の徴収の方法

代執行に要した費用は,国税滞納処分の例により,これを徴収することができる.
② 代執行に要した費用については,行政庁は,国税及び地方税に次ぐ順位の先取特権を有する.
③ 代執行に要した費用を徴収したときは,その徴収金は,事務費の所属に従い,国庫又は地方公共団体の経済の収入となる.

代執行に掛かった費用を納期日までに納めなかった場合、国税滞納処分と同じ手続で強制徴収できる。

行政上の強制徴収が認められている場合には、一般私法上の債権と同様に裁判所に訴えを提起して当該債権の実現[民事上の強制執行]を図ることはできない。

即時強制:=前提としての義務の不履行がないが、身体や財産に直接実力を加える形式によるもの。
直接強制が条例で定めることができないのに対して、即時強制は条例でも定めることができる。
即時強制の例:

行政罰の種類:

執行罰:=行政庁が義務者に自ら義務を履行させるため、あらかじめ義務不履行の場合には過料を科すことを予告し、義務不履行となった場合には、その都度、過料を徴収することによって、義務の履行を促す行政上の強制執行の方法。

(昭二六法九五・昭三四法一四八・一部改正)

附 則
① この法律は,公布の日から起算し,三十日を経過した日から,これを施行する.
② 行政執行法は,これを廃止する.
附 則 (昭和二六年三月三一日法律第九五号) 抄
1 この法律は,公布の日から施行し,この法律中に特別の定がある場合を除く外,市町村民税に関する改正規定中法人税割に関する部分及び事業税に関する改正規定中法人の行う事業に対する事業税に対する事業税に関する部分については昭和二十六年一月一日の属する事業年度分から,その他の部分については昭和二十六年度分の地方税から適用する.
附 則 (昭和三四年四月二〇日法律第一四八号) 抄
(施行期日)
1 この法律は,国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)の施行の日から施行する.
(施行の日=昭和三五年一月一日)
(公課の先取特権の順位の改正に関する経過措置)
7 第二章の規定による改正後の各法令(徴収金の先取特権の順位に係る部分に限る.)の規定は,この法律の施行後に国税徴収法第二条第十二号に規定する強制換価手続による配当手続が開始される場合について適用し,この法律の施行前に当該配当手続が開始されている場合における当該法令の規定に規定する徴収金の先取特権の順位については,なお従前の例による.
附 則 (昭和三七年九月一五日法律第一六一号) 抄
1 この法律は,昭和三十七年十月一日から施行する.
2 この法律による改正後の規定は,この附則に特別の定めがある場合を除き,この法律の施行前にされた行政庁の処分,この法律の施行前にされた申請に係る行政庁の不作為その他この法律の施行前に生じた事項についても適用する.ただし,この法律による改正前の規定によつて生じた効力を妨げない.
3 この法律の施行前に提起された訴願,審査の請求,異議の申立てその他の不服申立て(以下「訴願等」という.)については,この法律の施行後も,なお従前の例による.この法律の施行前にされた訴願等の裁決,決定その他の処分(以下「裁決等」という.)又はこの法律の施行前に提起された訴願等につきこの法律の施行後にされる裁決等にさらに不服がある場合の訴願等についても,同様とする.
4 前項に規定する訴願等で,この法律の施行後は行政不服審査法による不服申立てをすることができることとなる処分に係るものは,同法以外の法律の適用については,行政不服審査法による不服申立てとみなす.
5 第三項の規定によりこの法律の施行後にされる審査の請求,異議の申立てその他の不服申立ての裁決等については,行政不服審査法による不服申立てをすることができない.
6 この法律の施行前にされた行政庁の処分で,この法律による改正前の規定により訴願等をすることができるものとされ,かつ,その提起期間が定められていなかつたものについて,行政不服審査法による不服申立てをすることができる期間は,この法律の施行の日から起算する.
8 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については,なお従前の例による.
9 前八項に定めるもののほか,この法律の施行に関して必要な経過措置は,政令で定める.

posted by N.T.Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.

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