第3節 後見の事務
第853条 後見人は、遅滞なく被後見人の財産の調査に著手し、1箇月以内に、調査を終わり、且つ、その目録を調製しなければならない。但し、この期間は、家庭裁判所において、これを伸長することができる。
2 財産の調査及びその目録の調製は、後見監督人があるときは、その立会を以てこれをしなければ、その効力がない。
第854条 後見人は、目録の調製を終わるまでは、急迫の必要がある行為のみをする権限を有する。但し、これを善意の第3者に対抗することができない。
第855条 後見人が、被後見人に対し、債権を有し、又は債務を負う場合において、後見監督人があるときは、財産の調査に著手する前に、これを後見監督人に申し出なければならない。
2 後見人が、被後見人に対し債権を有することを知つてこれを申し出ないときは、その債権を失う。
第856条 前3条の規定は、後見人が就職した後被後見人が包括財産を取得した場合にこれを準用する。
第857条 未成年後見人は、第820条から第823条までに規定する事項について、親権を行う者と同1の権利義務を有する。ただし、親権を行う者が定めた教育の方法及び居所を変更し、未成年被後見人を懲戒場に入れ、営業を許可し、その許可を取り消し、又はこれを制限するには、未成年後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。
第858条 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たつては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。
第859条 後見人は、被後見人の財産を管理し、又、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。
2 第824条但書の規定は、前項の場合にこれを準用する。第859条の2 成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、数人の成年後見人が、共同して又は事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる。
2 家庭裁判所は、職権で、前項の規定による定めを取り消すことができる。
3 成年後見人が数人あるときは、第3者の意思表示は、その1人に対してすれば足りる。
第859条の3 成年後見人は、成年被後見人に代わつて、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
第860条 第826条の規定は、後見人にこれを準用する。但し、後見監督人がある場合は、この限りでない。
第861条 後見人は、その就職の初において、被後見人の生活、教育又は療養看護及び財産の管理のために毎年費すべき金額を予定しなければならない。
2 後見人が後見の事務を行うために必要な費用は、被後見人の財産の中から支弁する。
第862条 家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によつて、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。
第863条 後見監督人又は家庭裁判所は、何時でも、後見人に対し後見の事務の報告若しくは財産の目録の提出を求め、又は後見の事務若しくは被後見人の財産の状況を調査することができる。
2 家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求によつて、又は職権で、被後見人の財産の管理その他後見の事務について必要な処分を命ずることができる。
第864条 後見人が、被後見人に代わつて営業若しくは第12条第1項に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。ただし、元本の領収については、この限りでない。
第865条 後見人が、前条の規定に違反してし、又は同意を与えた行為は、被後見人又は後見人において、これを取り消すことができる。この場合には、第19条の規定を準用する。
2 前項の規定は、第121条乃至第126条の規定の適用を妨げない。
第866条 後見人が被後見人の財産又は被後見人に対する第3者の権利を譲り受けたときは、被後見人は、これを取り消すことができる。この場合には、第19条の規定を準用する。
2 前項の規定は、第121条乃至第126条の規定の適用を妨げない。
第867条 未成年後見人は、未成年被後見人に代わつて親権を行う。
2 第853条乃至第857条及び第861条乃至前条の規定は、前項の場合にこれを準用する。
第868条 親権を行う者が管理権を有しない場合には、未成年後見人は、財産に関する権限のみを有する。
第869条 第644条及び第830条の規定は、後見にこれを準用する。