罪刑法定主義
- 罪刑法定主義とは
- どのような行為が犯罪となり,どのような刑罰を科せられるのか
をあらかじめ法律で定めておかなければならないとする原則のこと
- マグナ・カルタ(1215)が罪刑法定主義の起源.
- 「法律なければ刑罰なし。法律なければ犯罪なし」(フォイエルバッハ)
- 「刑法は犯人のマグナ・カル夕である」(リスト)
日本国憲法において罪刑法定主義を含む規定
- 31条
- 39条
- 73条6号但書
罪刑法定主義の具体的な内容
- 罪刑の法定(慣習刑法の禁止,絶対的不定期刑の禁止)
- 明確性の原則
- 内容の適正の原則(罪刑の均衡)
- 類推解釈の禁止
- 類推解釈は許されませんが,言葉の可能な意味の範囲内で,言葉の日常用語的意味より広く解釈するという拡張解釈は許されます(通説).
- 「電気」は「人の所有物」(旧§366)にあたります(大判明36.5.21)
- 「汽車」(§129)には「ガソリンカー」が含まれます(大判昭15.8.22)
- 「写真コピー」は「文書」(§155)にあたります(最判昭51.4.30)
- 「補獲」には「矢を射かける行為」も含まれます(最判平8.2.8)
- 行為者にとって不利な類推解釈は禁止されますが,有利な類推解釈というのは何ら行為者の利益を害しませんので認められます.
- 事後法の禁止(刑罰不遡及の原則)
- 刑罰は法規の成立前の行為に遡って適用されることはないという原則.
- 少年が犯罪を犯した場合,刑事政策上の理由から,裁判中に成人に達すれば通常の刑を科しうるものとする法律を制定しても,刑罰不遡及の原則に反せず,罪刑法定主義にも反しません.
- 行為当時の最高裁判所の判例の示す法解釈に従えば無罪となるべき
行為を処罰しても,憲法39条の規定に違反しないとし,事後法の禁止が判例変更には適用されないとした判決があります(最判平8.11.1).
- 既に無罪の確定判決があった場合には再び刑事上の責任を問われないというのは一事不再理の原則であって事後法禁止原則ではありません.
罪刑法定主義が必要とされる根拠
- 「何が犯罪であり,何をすれば刑罰を科せられるかは,国民自身がその
代表者である国会を通じて法律をもって定めておかなければならない(民主主義の原理).
- 「何を守っていれば刑罰という不利益を甘受せしめられないかという予測可能性が確保されてはじめて国民に自由がある。」(自由主義の原理)
- 個人の尊厳によって基礎づけられる自由と権利を,国家刑罰権の懇意的行使から実質的に保障するという「実質的人権保障の原理」(憲法学的解釈)
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