水曜日, 1月 07, 2004

幕末を読み直す―通説が語らない「歴史」の真実  中村 彰彦 

歴史小説を手がけてきた著者がその執筆の過程で出会った「史実」に関して綴ったエッセイ集。
会津へ向う途中で、しかも校正中に目にした消費税率5%へという文字が筆者であった「史実」を媒介として保科正之の先進性に思いが馳せられるというところを面白く読ませてもらった。保科正之がおそらくは日本で初めての国民保険制度、これは90歳以上の人に禄米を支給するというもの、を施行したという史実。そして、日本の軍事費が膨大なものとなっていった時代を引き、一時期、ロシアに備えて臥薪嘗胆という、その一言で以って海軍費が陸軍費を上回ったという史実。この両者の史実と消費税5%を結び付け、臥薪嘗胆という言葉一つで膨大な軍事費を容認した国民を納得することのない現代の政治を嘆いてみせる。
そして、人が時代とともに進歩するという幻想を保科正之の先見性を引き合いに出すことで打ち砕く。その過程で著者自身の原稿の文章も打ち砕かれるというところは愛嬌といったところだろうか。


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