木曜日, 2月 26, 2004
司馬史観

色々な企画があるみたい。日露戦争というと、司馬遼太郎が小説『坂の上の雲』の中で描いた歴史観が広く浸透している。
司馬史観というものだけど、明治時代を近代日本の頂点と考えて大正時代を暗黒時代への転落の過程とする見方よね」

ただ、この司馬史観に関しては見直しが試みられている。
いづれにしても、1904年2月6日に宣戦布告、1904年2月9日に仁川沖で日本海軍がロシアの2隻の巡洋艦を攻撃したことで火蓋が切って落とされた日露戦争そのものの評価とそれ以後の日本の辿った道に対する考え方の再検討の機運が高まっている」

つまり、日本では特権階級に永続性がないとする。この点をヨーロッパと比較して、ヨーロッパの貴族階級は現在に至るまで続いているということを指摘しているのよ。
また、トルコにおける特権階級というのも永続的でなく、子孫に伝えられるというものではないとし、そこに日本とトルコとの共通性を見ようとしている」

ヨーロッパとの類似性よりはありそうではある。広い意味で同じウラル・アルタイ語族だから。
その対比って、やはりロシアに対する日本とトルコの採った態度を思い起こすなぁ。
それに、トルコにおいて特権階級が永続性を持たなかったことを、トルコ人が騎馬民族の系譜を継いでいることに求めて、同じウラル・アルタイ語族である日本人の祖先も騎馬民族だったのではないかとしているわけだよね」

この辺りは江上波夫氏による日本人騎馬民族説の影響なのだろうか。
江上氏は1948年以来、日本という国家の起源がユーラシア大陸の東北アジアに住んでいた騎馬民族が海を渡って日本列島を征服したことにあるんだという説を唱えた。
いわゆる『騎馬民族征服説』」

だから、司馬史観というのは多くの日本人には支持されてきた。専門的には色々とあるのだろうけどね。
そういう意味で、日露戦争開戦百周年ということを契機として振返ってじっくりと日本の辿ってきた道を考えてみる良い機会だね」

歴史と風土 文春文庫
司馬 遼太郎 (著)