火曜日, 3月 30, 2004

グリッドは何をもたらすのか 

グリッドと聞いて、「SETIアットホーム」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
分散コンピューティングと呼ばれる範疇に入る「SETIアットホーム」もそれなりに社会にインパクトを与えるだけの話題性はありました。
それに対して、グリッドコンピューティングは、各自のコンピュータ資源を共有するというP2Pの側面を持つほかに、インターネットの登場とその普及と同じ程度のインパクトがあるように思われます。
このような考え方は、JSPP2002に関するpcWEBの記事にも『グリッドコンピューティングは、インターネットの爆発的な普及と同じくらいの、革新的な変化をもたらすポテンシャルを持っているように思う』とあります。
ここで言うグリッドコンピューティングは単にクラスタの大きいものではありません。
IBMはグリッドコンピューティングを『オープンな標準により異機種間でのオペレーションを可能にするネットワークを利用した分散コンピューティング』と定義しています。
大和総研 情報技術研究所は『グリッドコンピューティングとは、多数のマシンを利用して大量の計算量を必要とするプログラムを実行すること』とはしているものの、注目されている理由として『処理を行うコンピューターとしてユーザーが利用するPCが考えられている』という点を挙げています。
これは、科学技術政策研究所の亘理誠夫の挙げる厳密な定義『グリッドとは、ネットワーク上に分散した多様な計算資源や情報資源(コンピュータ、記憶装置、可視化装置、大規模実験観測装置)を仮想組織のメンバーが一つの仮想コンピュータとして利用する環境』に相当します。
Wolfgang Gentzsch 氏による定義も基本的に同じことを『グリッド・コンピューティングに関する私の定義は、3 つの C から始まります。コンピューティング(Computing)、コラボレーション(Collaboration)、それにコミュニケーショ (Communication)』と洒落た表現をしています。この3つのCの最後の2つのCが大きな意味を持ってきます。
そして、グリッドコンピューティングには、『部門グリッド、企業(エンタープライズ)グリッド、それにグローバル・グリッド』という3つの段階があるとしています。
最後のグローバル・グリッドでは『コンピューティング・リソースは地理的に散在していてもかまいません。世界中のサイトがその対象となりうるのです。コンピューティング・リソースは個人でも 企業でも利用で きます。オーバーフローした作業をグリッド・プロバイダに送ることもできますし、複数の会社がデータを共有し、共同で作業することもできます。組織の境界は簡単に超える』という大胆な発言まで飛び出しています。
グリッドに参加するベンダーがユーザーが相互に互いの遊休資源を使いあう、自分の遊休資源を提供している場合は供給者となり、他社の遊休資源を使用する場合は需要者になり、こうしたグリッドに株式会社以外の組織が加わると、トフラーが『第三の波』で記述したプロシューマ現象のIT版が実現することになります。
ITベンダーが描く未来のIT業界像は電力業のようなユーティリティ産業。グリッド・コンピューティングの究極の姿は、電力市場が自由化によって供給者と需要者が固定せずに入れ替わる卸売電力市場へと向っている中で、まさに適切な喩えとなっています。


cover

第三の波 中公文庫 M 178-3
アルビン・トフラー (著), 徳岡 孝夫 (翻訳)

This page is powered by Blogger. Isn't yours?