木曜日, 3月 11, 2004
遠い遠い宇宙
「ハッブル宇宙望遠鏡(NASA Hubble Space Telescope)が映した超深宇宙(UDF,Ultra Deep Field)の画像って見た?」
「見た。見た。
彫刻室座(Sculptor:Scl)の東、エリダヌス座(Eridanus:Eri)の西にある炉座(Fornax:For)の方角で100万秒/コマで撮影したというね」
「宇宙が誕生してから500億年後の銀河も映っているらしいわね。天文学者や天文愛好家の間で感嘆の声が上がったのは、このわずか500億年後の銀河を観測できるということで宇宙誕生の謎に迫ることが出来るのではないかと考えられているからよね」
「銀河の光が届くまでに何年もかかるから、そういうことを考慮に入れると、今回の観測の画像は現在のところ人類が見ることの出来る最古の宇宙の残像ということになるね。
しっかり見なくちゃ。
米宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)に画像がいろいろあるよ。
エリダヌス座(Eridanus:Eri)っていうのはトレミーの48星座の1つで、全天で6番目の大きさの星座だよね。ということは炉座っていうのも南にいけば見えるってことか」
「超深宇宙を見ようとしているでしょ。
あなたの持っているような望遠鏡では片鱗も見えるわけないでしょ。
確か、米宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によると、地球から月の蛍光灯を眺める程度の明るさだって言っていたような」
「分かってはいるんだけどね。
ところで、超深宇宙っていうのは?」
「深宇宙というのは400から800メガパーセク(Mpc)の宇宙空間だから、超深宇宙というのは800メガパーセク(Mpc)よりも遠い宇宙ということね。
だいたい、1メガパーセクが約326万光年。地球からアンドロメダまでの距離がほぼ1メガパーセクってところね」
「すっごく遠いんだなぁ」
出所:米宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)
「見た。見た。
彫刻室座(Sculptor:Scl)の東、エリダヌス座(Eridanus:Eri)の西にある炉座(Fornax:For)の方角で100万秒/コマで撮影したというね」
「宇宙が誕生してから500億年後の銀河も映っているらしいわね。天文学者や天文愛好家の間で感嘆の声が上がったのは、このわずか500億年後の銀河を観測できるということで宇宙誕生の謎に迫ることが出来るのではないかと考えられているからよね」
「銀河の光が届くまでに何年もかかるから、そういうことを考慮に入れると、今回の観測の画像は現在のところ人類が見ることの出来る最古の宇宙の残像ということになるね。
しっかり見なくちゃ。
米宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)に画像がいろいろあるよ。
エリダヌス座(Eridanus:Eri)っていうのはトレミーの48星座の1つで、全天で6番目の大きさの星座だよね。ということは炉座っていうのも南にいけば見えるってことか」
「超深宇宙を見ようとしているでしょ。
あなたの持っているような望遠鏡では片鱗も見えるわけないでしょ。
確か、米宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によると、地球から月の蛍光灯を眺める程度の明るさだって言っていたような」
「分かってはいるんだけどね。
ところで、超深宇宙っていうのは?」
「深宇宙というのは400から800メガパーセク(Mpc)の宇宙空間だから、超深宇宙というのは800メガパーセク(Mpc)よりも遠い宇宙ということね。
だいたい、1メガパーセクが約326万光年。地球からアンドロメダまでの距離がほぼ1メガパーセクってところね」
「すっごく遠いんだなぁ」
出所:米宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)
水曜日, 3月 10, 2004
生命はどこから
「火星に水が存在した痕跡が見つかったけど、生物はどうなのかな。
地球の原始的な生命は海の中でアミノ酸が変化して誕生したんだっていう説があるしね。そして、1953年にはシカゴ大学の大学院生ミラー(SL.Miller)が原始地球を仮想的に再現した実験装置を使って、その中で放電を行うことでアミノ酸が生成することを確認している。
つまり、原始的な地球の大気からアミノ酸は自然現象によって作り出される。さらに、そのアミノ酸が海の中で変化を遂げて生命になったと考えられるわけだね」
「まず、生命というのは単なる物質ではなくてタンパク質や核酸などの有機物の集合体であること、エネルギーの出し入れを自分で行うことが出来ること、これは代謝活動ね、それから自己増殖可能なこと。こうした条件が満たされる物質が生命ということね。
その昔は、生命というのは自然に湧き出てくると考えるのが自然だった。これをフランスの化学者で細菌学者でもあったパスツール(Louis Pasteur:1822-95)が実験で覆した(1862年)。
こうやって通説を実験で覆すというのが科学の醍醐味よね」
「生命は自然に湧き出てくるものではなくて、生命は生命からしか生まれないとしたわけだね。
丁度同じ時期にイギリスの博物学者のダーウィン(Charles Darwin:1809-82)が生物は進化するんだっていう進化論を発表している。
ふむふむ。
生命は生命からしか生まれない。そして生命はその形を進化させる。
そうすると、現在の生命から遡っていって最初の生命はどこから生まれたんだってことになる。
生命は生命からしか生まれないというのがパスツール(Louis Pasteur:1822-95)の実験結果だからね」
「そこで、化学者のアレニウス(Arrhenius)は微細な細菌が太陽風を受けて宇宙を飛ぶという可能性を検討して細胞の核となる部分が宇宙から地球にやってきたんだっていう汎胞子説、いわゆるパンスペルミア[Panspermia]説を唱えた。
それじゃぁ、その細胞の核となる物質はどこでどうやって作られたのかってことになると振り出しに戻るけど」
「地球上で変化したか、宇宙のどこかで変化したかは別として、ともかくも生命がアミノ酸から変化を遂げて誕生したってことは間違いない。
1969年にオーストラリアのマーチソンに落下したマーチソン隕石からは水分とともにアミノ酸も含まれていることが確認されている。
そうすると、生命の核となる部分は原始的な地球で自然に生成されたものではなくて、宇宙から飛んできたものだっていう説も十分に成り立つ。
生命の核となる部分が宇宙からもたらされたということになると、生命が存在する可能性があるのは何も地球だけではないということの有力な証拠となるわけだね。
地球の環境が特殊だったために現在のように生命が誕生したんだってことにはならなくなる」
「そうね。
さらに、ミラーの実験にもあるように、アミノ酸は自然現象で発生するし、そのアミノ酸を100度のコバルトやモリブデンなどの金属イオンの濃度を1000から10万倍に高めた海水の中に入れて数週間おくと、これまた自然現象としてマリグラヌール(marigranule)と呼ばれるタンパク質に近い物質が生成されることが知られているわね」
「そのマリグラヌール(marigranule)っていうのは増殖に近い現象を起す。原始的な生命の祖先的な物質だね。
そうしたものが原始的な地球の大気の状態からでも自然現象で出来てしまう。
でも、同じようなものはターギッシュレイク隕石からも発見されている。
いづれにしても、水があれば生命が存在する条件の大きな一つが満たされると考えると火星で水の痕跡が見つかったということを聞くと、生命の痕跡はと期待せずにはおけないな」
宇宙生物学への招待 文庫クセジュ
フランソワ ロラン (著), ジャン シュネデール (著), フロランス ロラン=セルソー (著), Fran Raulin (原著), Jean Schneider (原著), Florence Raulin‐Cerceau (原著), 唐牛 幸子 (翻訳)
地球の原始的な生命は海の中でアミノ酸が変化して誕生したんだっていう説があるしね。そして、1953年にはシカゴ大学の大学院生ミラー(SL.Miller)が原始地球を仮想的に再現した実験装置を使って、その中で放電を行うことでアミノ酸が生成することを確認している。
つまり、原始的な地球の大気からアミノ酸は自然現象によって作り出される。さらに、そのアミノ酸が海の中で変化を遂げて生命になったと考えられるわけだね」
「まず、生命というのは単なる物質ではなくてタンパク質や核酸などの有機物の集合体であること、エネルギーの出し入れを自分で行うことが出来ること、これは代謝活動ね、それから自己増殖可能なこと。こうした条件が満たされる物質が生命ということね。
その昔は、生命というのは自然に湧き出てくると考えるのが自然だった。これをフランスの化学者で細菌学者でもあったパスツール(Louis Pasteur:1822-95)が実験で覆した(1862年)。
こうやって通説を実験で覆すというのが科学の醍醐味よね」
「生命は自然に湧き出てくるものではなくて、生命は生命からしか生まれないとしたわけだね。
丁度同じ時期にイギリスの博物学者のダーウィン(Charles Darwin:1809-82)が生物は進化するんだっていう進化論を発表している。
ふむふむ。
生命は生命からしか生まれない。そして生命はその形を進化させる。
そうすると、現在の生命から遡っていって最初の生命はどこから生まれたんだってことになる。
生命は生命からしか生まれないというのがパスツール(Louis Pasteur:1822-95)の実験結果だからね」
「そこで、化学者のアレニウス(Arrhenius)は微細な細菌が太陽風を受けて宇宙を飛ぶという可能性を検討して細胞の核となる部分が宇宙から地球にやってきたんだっていう汎胞子説、いわゆるパンスペルミア[Panspermia]説を唱えた。
それじゃぁ、その細胞の核となる物質はどこでどうやって作られたのかってことになると振り出しに戻るけど」
「地球上で変化したか、宇宙のどこかで変化したかは別として、ともかくも生命がアミノ酸から変化を遂げて誕生したってことは間違いない。
1969年にオーストラリアのマーチソンに落下したマーチソン隕石からは水分とともにアミノ酸も含まれていることが確認されている。
そうすると、生命の核となる部分は原始的な地球で自然に生成されたものではなくて、宇宙から飛んできたものだっていう説も十分に成り立つ。
生命の核となる部分が宇宙からもたらされたということになると、生命が存在する可能性があるのは何も地球だけではないということの有力な証拠となるわけだね。
地球の環境が特殊だったために現在のように生命が誕生したんだってことにはならなくなる」
「そうね。
さらに、ミラーの実験にもあるように、アミノ酸は自然現象で発生するし、そのアミノ酸を100度のコバルトやモリブデンなどの金属イオンの濃度を1000から10万倍に高めた海水の中に入れて数週間おくと、これまた自然現象としてマリグラヌール(marigranule)と呼ばれるタンパク質に近い物質が生成されることが知られているわね」
「そのマリグラヌール(marigranule)っていうのは増殖に近い現象を起す。原始的な生命の祖先的な物質だね。
そうしたものが原始的な地球の大気の状態からでも自然現象で出来てしまう。
でも、同じようなものはターギッシュレイク隕石からも発見されている。
いづれにしても、水があれば生命が存在する条件の大きな一つが満たされると考えると火星で水の痕跡が見つかったということを聞くと、生命の痕跡はと期待せずにはおけないな」
宇宙生物学への招待 文庫クセジュ
フランソワ ロラン (著), ジャン シュネデール (著), フロランス ロラン=セルソー (著), Fran Raulin (原著), Jean Schneider (原著), Florence Raulin‐Cerceau (原著), 唐牛 幸子 (翻訳)
言葉から世界へ
「チョムスキー(Avram Noam Chomsky)に関係する書籍を書店で見かけるようになったね。奥のほうに置かれていたのが前のそれなりに目立つ棚に移動されていたりしている。
多分、チョムスキーが9.11以後の米国の行動に対して異議を申し立てていることと関係しているんだろう。
そして、日本人の中にも、口に出しては言わないけれども何がしかの違和感を覚えているという人達がいる。
需要と供給が一致して棚を移動したというべきかな」
「チョムスキーの専門分野の言語学の本もそれなりに注目されているわね。
内容が難しいから門外漢というか、評論から関心を抱いた人が流れでチョムスキーの言語学の本にもというのは挫折のもとでしょうけど」
「チョムスキーは、人は生まれながらにして言葉を持っているという説を考えた人だね。
遺伝的に言葉を持っているといったわけだ。それ以前は、言葉というものは社会的に修得するものだって考えるのが普通だったから衝撃は大きかった。
チョムスキーは言語の分布地図のようなものを描くことの重要性を否定することはしないけれども、言葉を分類することそのものよりも、言葉とは何かということを理論的に考えていくことが言語学の使命だと思ったらしいね」
「人は遺伝的にそれぞれの言葉の素である『普遍文法』というものを持っているという考え方はデカルト流言語学なんて言われている。
つまり、機械論的に言語を細かく解剖して考えるというもの。
この『普遍文法』の存在は、例えば、赤ん坊が文法的に誤りの多い赤ちゃん言葉で話し掛けられながらも非常に短期間で完全な文法を修得してしまうことで証明されるとしている」
「そうした考え方を下敷きにして、特定の言語について正しいと考えられている文を作るような規則を作ろうという生成文法(generative grammar)という理論を発展させた。
発展させたんだけど、どうだろう。
彼の学問的企ては成功したと言えるのかな」
「現時点では生成文法(generative grammar)を応用して自動翻訳を行おうとした人工知能の試みは成功しているとは言えない。
でもね、現時点で判断することは早すぎるように思うわ。
それに、チョムスキー博士の業績は狭く言語学の中だけには留まらないでしょ。その思考体系は情報科学や認知科学などの流れに大きな影響を及ぼしたでしょ」
「チョムスキー博士は社会評論家としての側面もあるしね。
その点での評価は言語学における評価とは別にしないといけないだろうね。
9.11以後の言論やポルポト派に対する言動をもとにして全ての業績を否定してしまうという態度は慎まなければいけないだろうね。
でね、チョムスキーの社会評論に共感を覚えた人がチョムスキーの言語学にも親しめるかというと....」
「何その......は」
『チョムスキー入門』
チョムスキー入門
ジョン・C. マーハ (著), John C. Maher (原著), Judy Groves (原著), 芦村 京 (翻訳), ジュディ グローヴス
多分、チョムスキーが9.11以後の米国の行動に対して異議を申し立てていることと関係しているんだろう。
そして、日本人の中にも、口に出しては言わないけれども何がしかの違和感を覚えているという人達がいる。
需要と供給が一致して棚を移動したというべきかな」
「チョムスキーの専門分野の言語学の本もそれなりに注目されているわね。
内容が難しいから門外漢というか、評論から関心を抱いた人が流れでチョムスキーの言語学の本にもというのは挫折のもとでしょうけど」
「チョムスキーは、人は生まれながらにして言葉を持っているという説を考えた人だね。
遺伝的に言葉を持っているといったわけだ。それ以前は、言葉というものは社会的に修得するものだって考えるのが普通だったから衝撃は大きかった。
チョムスキーは言語の分布地図のようなものを描くことの重要性を否定することはしないけれども、言葉を分類することそのものよりも、言葉とは何かということを理論的に考えていくことが言語学の使命だと思ったらしいね」
「人は遺伝的にそれぞれの言葉の素である『普遍文法』というものを持っているという考え方はデカルト流言語学なんて言われている。
つまり、機械論的に言語を細かく解剖して考えるというもの。
この『普遍文法』の存在は、例えば、赤ん坊が文法的に誤りの多い赤ちゃん言葉で話し掛けられながらも非常に短期間で完全な文法を修得してしまうことで証明されるとしている」
「そうした考え方を下敷きにして、特定の言語について正しいと考えられている文を作るような規則を作ろうという生成文法(generative grammar)という理論を発展させた。
発展させたんだけど、どうだろう。
彼の学問的企ては成功したと言えるのかな」
「現時点では生成文法(generative grammar)を応用して自動翻訳を行おうとした人工知能の試みは成功しているとは言えない。
でもね、現時点で判断することは早すぎるように思うわ。
それに、チョムスキー博士の業績は狭く言語学の中だけには留まらないでしょ。その思考体系は情報科学や認知科学などの流れに大きな影響を及ぼしたでしょ」
「チョムスキー博士は社会評論家としての側面もあるしね。
その点での評価は言語学における評価とは別にしないといけないだろうね。
9.11以後の言論やポルポト派に対する言動をもとにして全ての業績を否定してしまうという態度は慎まなければいけないだろうね。
でね、チョムスキーの社会評論に共感を覚えた人がチョムスキーの言語学にも親しめるかというと....」
「何その......は」
『チョムスキー入門』
チョムスキー入門
ジョン・C. マーハ (著), John C. Maher (原著), Judy Groves (原著), 芦村 京 (翻訳), ジュディ グローヴス
火曜日, 3月 09, 2004
波紋を広げる鳥インフルエンザ
「鳥インフルエンザ問題で揺れている兵庫県姫路の浅田農産の会長夫婦が8日に自殺というのは大きな衝撃。
遺書に従業員の給料を心配する内容があったというから最期まで従業員のことを心配していたであろう人柄の一端が伺えるわ」
「事実関係の確認や責任の問題を含めてこれからだからね。その中での自殺というのは残念。
浅田農産は京都じゃなかったの?」
「鳥インフルエンザの問題が発生したのは京都の丹波。でも浅田農産の本社は姫路のようよ。
そういえば、カラスにも感染していたらしいわ。
ところで、インフルエンザといわゆる風邪とはどういう違いがあるの?」
「インフルエンザ(influenza)というのは、インフルエンザウィルスによる呼吸器感染症。風邪はインフルエンザ(influenza)以外のウィルスによる呼吸器感染症。風邪の半分から3分の1はライノウイルス(rhinovirus)と言われているけど、このライノウイルス(rhinovirus)に感染するといわゆる鼻かぜの症状になる。
そもそも、ライノ(rhino)というのは鼻という意味だからね」
「何だか違いがないみたいに聞こえるんだけど。
インフルエンザにはA型とB型とC型という3つの型があるっていうわね」
「C型というのは流行するということはあまりないと言われるけどね。
それから、A型とB型というけど、沢山のバージョンがある。
なんでも、インフルエンザウィルスの表面にHスパイク、Nスパイクという2種類の突起物があって、これが変化することで新種誕生と相成るらしい。
HというのはA型の場合には、ヘマグルチニン(HA)、Nはノイラミニダーゼ(NA)。それぞれHで15種類、Nで2種類あると言われる。一方、B型の場合は多種多様。
だから、A型とB型とC型と3つの分類があるといっても様々な新種があるということだね。
でも、人間に感染するという観点からいうと種類が限定されてくる。これはHで3種類、Nで2種類。さらに確認されているのは、H1N1、H2N2、H3N2。H1N1は1977年から1978年に流行しAソ連型と呼ばれ、H3N2は1968年から1969年に流行ってA香港型と言われるね。1997年に香港で発見されたH5N1というのもあるけど、とにかく種類は限られていると言える。
1918年から1919年に大流行したスペインかぜはH1N1型、1957年から1958年にかけて猛威を振るったアジアかぜはH2N2。浅田農産で見つかったのはH5N1型、カラスから検出されたのはH5型でN1かどうかは調査中というね」
「ライノウイルスだって沢山あるんでしょ?」
「うん。
ライノウィルスはピコルナウイルス(Picornavirus)科に属するけど、このピコルナウイルス(Picornavirus)科には5つの種類がある。
まずライノウイルス(rhinovirus)、それからエンテロウイルス(enterovirus)、アフトウイルス(aphthovirus)、カルジオウイルス(cardiovirus)、そして以前はエンテロウイルス72型としてエンテロウイルス属とされていたヘパトウイルス属。
そのうち、人間に感染して悪さをするのは、エンテロウイルス属,ライノウイルス属,ヘパトウイルス属の3つ」
「で、そのライノにも沢山種類があると。
ピコルナってスコルバみたいな名前だけど小さいって意味のピコと関係あるの?」
「小さいRNAでピコルナ。
でね、インフルエンザは基本型、さっきのA、B、Cだけど、そういう基本型があってそこから亜種が出てくる。
これに対して、ライノの場合は数百種類の血清型が存在すると言われている。
インフルエンザは種類が少なくワクチンで対応可能だけれども症状が重い。ライノの場合は種類が多くてワクチンでは対応することは不可能に近いけれども症状は軽いということになるかな」
「鳥インフルエンザというのは?」
「A型。
日本ではH5、H7型が急性で罹病率及び致死率の高いという理由で高病原性鳥インフルエンザとして家畜伝染病予防法で家畜伝染病に指定されている」
遺書に従業員の給料を心配する内容があったというから最期まで従業員のことを心配していたであろう人柄の一端が伺えるわ」
「事実関係の確認や責任の問題を含めてこれからだからね。その中での自殺というのは残念。
浅田農産は京都じゃなかったの?」
「鳥インフルエンザの問題が発生したのは京都の丹波。でも浅田農産の本社は姫路のようよ。
そういえば、カラスにも感染していたらしいわ。
ところで、インフルエンザといわゆる風邪とはどういう違いがあるの?」
「インフルエンザ(influenza)というのは、インフルエンザウィルスによる呼吸器感染症。風邪はインフルエンザ(influenza)以外のウィルスによる呼吸器感染症。風邪の半分から3分の1はライノウイルス(rhinovirus)と言われているけど、このライノウイルス(rhinovirus)に感染するといわゆる鼻かぜの症状になる。
そもそも、ライノ(rhino)というのは鼻という意味だからね」
「何だか違いがないみたいに聞こえるんだけど。
インフルエンザにはA型とB型とC型という3つの型があるっていうわね」
「C型というのは流行するということはあまりないと言われるけどね。
それから、A型とB型というけど、沢山のバージョンがある。
なんでも、インフルエンザウィルスの表面にHスパイク、Nスパイクという2種類の突起物があって、これが変化することで新種誕生と相成るらしい。
HというのはA型の場合には、ヘマグルチニン(HA)、Nはノイラミニダーゼ(NA)。それぞれHで15種類、Nで2種類あると言われる。一方、B型の場合は多種多様。
だから、A型とB型とC型と3つの分類があるといっても様々な新種があるということだね。
でも、人間に感染するという観点からいうと種類が限定されてくる。これはHで3種類、Nで2種類。さらに確認されているのは、H1N1、H2N2、H3N2。H1N1は1977年から1978年に流行しAソ連型と呼ばれ、H3N2は1968年から1969年に流行ってA香港型と言われるね。1997年に香港で発見されたH5N1というのもあるけど、とにかく種類は限られていると言える。
1918年から1919年に大流行したスペインかぜはH1N1型、1957年から1958年にかけて猛威を振るったアジアかぜはH2N2。浅田農産で見つかったのはH5N1型、カラスから検出されたのはH5型でN1かどうかは調査中というね」
「ライノウイルスだって沢山あるんでしょ?」
「うん。
ライノウィルスはピコルナウイルス(Picornavirus)科に属するけど、このピコルナウイルス(Picornavirus)科には5つの種類がある。
まずライノウイルス(rhinovirus)、それからエンテロウイルス(enterovirus)、アフトウイルス(aphthovirus)、カルジオウイルス(cardiovirus)、そして以前はエンテロウイルス72型としてエンテロウイルス属とされていたヘパトウイルス属。
そのうち、人間に感染して悪さをするのは、エンテロウイルス属,ライノウイルス属,ヘパトウイルス属の3つ」
「で、そのライノにも沢山種類があると。
ピコルナってスコルバみたいな名前だけど小さいって意味のピコと関係あるの?」
「小さいRNAでピコルナ。
でね、インフルエンザは基本型、さっきのA、B、Cだけど、そういう基本型があってそこから亜種が出てくる。
これに対して、ライノの場合は数百種類の血清型が存在すると言われている。
インフルエンザは種類が少なくワクチンで対応可能だけれども症状が重い。ライノの場合は種類が多くてワクチンでは対応することは不可能に近いけれども症状は軽いということになるかな」
「鳥インフルエンザというのは?」
「A型。
日本ではH5、H7型が急性で罹病率及び致死率の高いという理由で高病原性鳥インフルエンザとして家畜伝染病予防法で家畜伝染病に指定されている」
月曜日, 3月 08, 2004
近江商人
「5日に『たそがれ清兵衛』がテレビで放映されたけど撮影場所の一つが彦根城だったらしいわよ。
彦根城は良い形のお城よね」
「何年前だったかなぁ、行ったのは。
あの辺りって西武系列のバスが多く走っていたね。西武の発祥の地だよね、彦根のある近江は」
「西武だけじゃないわよ。高島屋は江戸時代の終わりに高島郡南新保村出身の飯田儀兵衛が京都で高島屋飯田儀兵衛という米穀店を営んで、彼の娘婿の新七が、このお店を引き継いで高島屋飯田呉服店としたのが始まりだから、高島屋も近江が発祥の地というか所縁の地。天保2(1831)年のことね。
それ以外にも丸紅や伊藤忠も近江に繋がりがある」
「奢者必不久、自彊不息で知られる近江商人かぁ。
八幡、日野、五箇荘といった蒲生、神崎、愛知郡の近江中郡の商人が有名だね。
蒲生というのは大名の蒲生氏の統治したところで確か、ここの日野商人は蒲生氏が会津に移ったことを契機に関東から東北にかけて勢力を伸ばしたわね」
「上総で日野椀の製造販売を行ったことで知られている中井源左衛門とかね。
司馬遼太郎氏が『歴史を紀行する』の中で近江商人を華僑に擬えて産業資本に対する商業資本であったとしている。だけど、中井源左衛門の活動などをみると産業資本化する土壌もあるにはあったことになるね」
「もう一つ、司馬さんは、近江商人に渡来人の血が色濃く流れていることが、近江商人を他の地方の商人とは異ならせることになっているのではないかというような考察を披瀝されている。
新羅の国王(こにきし)の子である天日矛が大陸から海を渡って若狭に上陸し近江を経て但馬に定住。近江にも一部が居住したという伝説がある。
その伝説を裏付けるように、近江には新羅の勢力の痕跡を今でも認めることが出来るのよね」
「新羅に限らず、朝鮮半島の人々は武蔵などの辺境の地にも移住している。だけど、辺境の地に移住した朝鮮半島の人々はそれぞれの辺境に暮らす人々との混血が進んで朝鮮半島の特質を失ってしまったのではないか。その点、近江の人々、近江商人の祖先は混血の影響が最小限に留まったために特質が近世にまで残ったのではないかと氏は説を展開しているね」
「『最後の石段をのぼりきったとき、眼前にひろがった風景のあやしさについては私は生涯わすれることができないだろう』としている石塔寺の石の塔に大陸の匂いを感じるようなスケールの大きな構想は如何にも司馬さんらしい」
「そう思わせるほどに近江商人が日本の商業史に残した足跡というのは大きいってことだよね。そうしたことは近江の人でなければ出来なかったのではないだろうか。どうして、近江の人であって筑紫の人ではないのか。信州の人ではないのか。違いはどこから生じたのか。そういうことを突き詰めて考えていくと、世界に冠たる華僑との共通性に思いが至るし、半島との血の繋がりという伝説も輝きを放ってくるというわけだね」
歴史を紀行する 文春文庫
司馬 遼太郎 (著)
彦根城は良い形のお城よね」
「何年前だったかなぁ、行ったのは。
あの辺りって西武系列のバスが多く走っていたね。西武の発祥の地だよね、彦根のある近江は」
「西武だけじゃないわよ。高島屋は江戸時代の終わりに高島郡南新保村出身の飯田儀兵衛が京都で高島屋飯田儀兵衛という米穀店を営んで、彼の娘婿の新七が、このお店を引き継いで高島屋飯田呉服店としたのが始まりだから、高島屋も近江が発祥の地というか所縁の地。天保2(1831)年のことね。
それ以外にも丸紅や伊藤忠も近江に繋がりがある」
「奢者必不久、自彊不息で知られる近江商人かぁ。
八幡、日野、五箇荘といった蒲生、神崎、愛知郡の近江中郡の商人が有名だね。
蒲生というのは大名の蒲生氏の統治したところで確か、ここの日野商人は蒲生氏が会津に移ったことを契機に関東から東北にかけて勢力を伸ばしたわね」
「上総で日野椀の製造販売を行ったことで知られている中井源左衛門とかね。
司馬遼太郎氏が『歴史を紀行する』の中で近江商人を華僑に擬えて産業資本に対する商業資本であったとしている。だけど、中井源左衛門の活動などをみると産業資本化する土壌もあるにはあったことになるね」
「もう一つ、司馬さんは、近江商人に渡来人の血が色濃く流れていることが、近江商人を他の地方の商人とは異ならせることになっているのではないかというような考察を披瀝されている。
新羅の国王(こにきし)の子である天日矛が大陸から海を渡って若狭に上陸し近江を経て但馬に定住。近江にも一部が居住したという伝説がある。
その伝説を裏付けるように、近江には新羅の勢力の痕跡を今でも認めることが出来るのよね」
「新羅に限らず、朝鮮半島の人々は武蔵などの辺境の地にも移住している。だけど、辺境の地に移住した朝鮮半島の人々はそれぞれの辺境に暮らす人々との混血が進んで朝鮮半島の特質を失ってしまったのではないか。その点、近江の人々、近江商人の祖先は混血の影響が最小限に留まったために特質が近世にまで残ったのではないかと氏は説を展開しているね」
「『最後の石段をのぼりきったとき、眼前にひろがった風景のあやしさについては私は生涯わすれることができないだろう』としている石塔寺の石の塔に大陸の匂いを感じるようなスケールの大きな構想は如何にも司馬さんらしい」
「そう思わせるほどに近江商人が日本の商業史に残した足跡というのは大きいってことだよね。そうしたことは近江の人でなければ出来なかったのではないだろうか。どうして、近江の人であって筑紫の人ではないのか。信州の人ではないのか。違いはどこから生じたのか。そういうことを突き詰めて考えていくと、世界に冠たる華僑との共通性に思いが至るし、半島との血の繋がりという伝説も輝きを放ってくるというわけだね」
歴史を紀行する 文春文庫
司馬 遼太郎 (著)
川辺の火星温泉は露天風呂?
「4日に米国の無人火星探査車オポチュニティー(Opportunity Rover)が火星で水が存在した痕跡を見つけたという発表があったわね。
なんでも、着陸地点のメリディアン台地(Meridiani Planum)の岩石を採取して調べた結果どうやら水があったらしいと」
「El Capitanって名付けられた岩を穿ったら硫化塩(sulfate salts)、硫酸鉄水和物の鉄明礬石(jarosite、K2Fe63+(SO4)4(OH)12)、それに赤鉄鉱(hematite)が見つかったって言っているね。メスバウワー分光計(The Mössbauer spectrometer)で調べた結果で、鉄明礬石は酸性の水に長いこと浸かっていないと出来ない物質だし、硫化塩も水がないと出来ない物質だ」
「鉄明礬石って馴染みがないけど、1852年にスペインのSierra AlmagrenaのJaroso川で発見された物質で褐色をした八面体の結晶状のもの。
礬(ばん)というのはアルミニウムの意味。化学ではミョウバンという具合にハイカラにカタカナで書くわね。で、明礬は、そのアルミニウムかクロム、鉄など三価金属からなる硫酸塩とカリウムかアンモニウム、ナトリウムなど一価陽イオンの硫酸塩との複塩の一般的名称」
「あのさぁ、それって全然、全く分からない。
ようは別府温泉などの明礬・緑礬泉でプカプカ浮いている湯ノ花(コロイド)に含まれているものだね。
正確じゃないけど。イメージとして湯ノ花。ということは水がないと出来ないってこと。それから、硫酸塩というのは『にがり(豆腐用凝固剤)』だね。
これも水と関係が深い」
「折角、化学っぽく説明したのに...
化学らしさを貫くわよ、今回は。でね、そうした物質の他にも
○岩石中の「がま(vugs)」と呼ばれる小空洞
○球状の鉱物
○斜層理(crossbed)という地層構造
があったことから水が存在したことが明らかだという発表ね」
「河原にある石の連想だよね。
コロコロと丸い石とその小石に削られた大きな岩の窪みってとこだ。
うんうん、それは水があったということの有力な証拠になるね。メリディアン台地(Meridiani Planum)というのは、さしずめ水辺の温泉ってとこかな。
斜層理っていうのも川辺に見られるグニャリとした地層だね。古い地層が水にえぐられて、その上に新しい地層が積み重なる。だから、地層と地層がクロスしているようになるわけだ。う〜ん、やはり水辺の火星温泉かぁ」
「斜層理は水の力で出来たとは限らないのよ。風の力でも出来る可能性があるらしいわ。
でも、他の証拠が幾つか見つかって、その上に斜層理が見られたってことは水があった可能性が極めて高いってことになるんでしょうね」
なんでも、着陸地点のメリディアン台地(Meridiani Planum)の岩石を採取して調べた結果どうやら水があったらしいと」
「El Capitanって名付けられた岩を穿ったら硫化塩(sulfate salts)、硫酸鉄水和物の鉄明礬石(jarosite、K2Fe63+(SO4)4(OH)12)、それに赤鉄鉱(hematite)が見つかったって言っているね。メスバウワー分光計(The Mössbauer spectrometer)で調べた結果で、鉄明礬石は酸性の水に長いこと浸かっていないと出来ない物質だし、硫化塩も水がないと出来ない物質だ」
「鉄明礬石って馴染みがないけど、1852年にスペインのSierra AlmagrenaのJaroso川で発見された物質で褐色をした八面体の結晶状のもの。
礬(ばん)というのはアルミニウムの意味。化学ではミョウバンという具合にハイカラにカタカナで書くわね。で、明礬は、そのアルミニウムかクロム、鉄など三価金属からなる硫酸塩とカリウムかアンモニウム、ナトリウムなど一価陽イオンの硫酸塩との複塩の一般的名称」
「あのさぁ、それって全然、全く分からない。
ようは別府温泉などの明礬・緑礬泉でプカプカ浮いている湯ノ花(コロイド)に含まれているものだね。
正確じゃないけど。イメージとして湯ノ花。ということは水がないと出来ないってこと。それから、硫酸塩というのは『にがり(豆腐用凝固剤)』だね。
これも水と関係が深い」
「折角、化学っぽく説明したのに...
化学らしさを貫くわよ、今回は。でね、そうした物質の他にも
○岩石中の「がま(vugs)」と呼ばれる小空洞
○球状の鉱物
○斜層理(crossbed)という地層構造
があったことから水が存在したことが明らかだという発表ね」
「河原にある石の連想だよね。
コロコロと丸い石とその小石に削られた大きな岩の窪みってとこだ。
うんうん、それは水があったということの有力な証拠になるね。メリディアン台地(Meridiani Planum)というのは、さしずめ水辺の温泉ってとこかな。
斜層理っていうのも川辺に見られるグニャリとした地層だね。古い地層が水にえぐられて、その上に新しい地層が積み重なる。だから、地層と地層がクロスしているようになるわけだ。う〜ん、やはり水辺の火星温泉かぁ」
「斜層理は水の力で出来たとは限らないのよ。風の力でも出来る可能性があるらしいわ。
でも、他の証拠が幾つか見つかって、その上に斜層理が見られたってことは水があった可能性が極めて高いってことになるんでしょうね」