金曜日, 5月 20, 2005

人は地道に 

 小さな虫が沢山飛び交っている。虫は苦手なので、飛んでいる虫が小さいということが何よりの救いではある。ただ、集団で飛んでいるので、歩いていて、その集団に出くわしてしまうと、髪の毛と言わず、服と言わず、顔にさえもくっ付く。一匹や二匹というレベルではなくて何匹も。
こうなってくると、全身虫だらけのような気がしてしまって仕方が無い。虫自体は、何と言う名前なのかは知らないが、かなり小さい。どの位小さいのかというと、良く見なければ、埃(ホコリ)と間違えてしまうほど。1ミリの半分もない程度の大きさ。
集団で一斉に飛んでいるということは、ここのところ天気が良いので羽化したということか。
お酒を飲んで天にも昇る気持ちになることを羽化登仙という。もともとは、いわゆる神仙思想の中で仙人に羽が生えて天上界へ昇ること。
おそらくは昆虫の羽化の様子を見て、人間に当て嵌めて考えたのだろう。
昆虫のように羽が生えて飛べたら良いのにという考え方は古くから世界各地にある。
鳥になりたいというのもある。しかし、鳥だと手が羽になっているから、飛べるようになっても、鉛筆を持ったり、ジュースの缶を持ったりということが不便になる。
劇の発表会やテーマパークでの仕事などで鳥の着ぐるみを着たことがある人は実感できると思う。羽でモノを掴(つか)むのは相当に難しい。
お昼弁当を、そのままの格好で食べようとすると、もう大変なもの。
その点、昆虫の場合は肢(足)があって羽もある。
イカロスではないが、鳥になった気分になっても、あるいは鳥人間と言われる伝説でも、それは、厳密には鳥ではなくて虫ではないか。
ともあれ、昆虫が幼虫から羽のある成虫へと、昆虫にしては華麗な変身を遂げるというのは感嘆せざるを得ない。
華麗な変身を遂げるのは昆虫の約85%と言われている。昆虫のほとんどと言ってもよい。卵から、あまり脚光を浴びることのないイモムシと呼ばれる幼虫時代を過ごし、更には蛹(サナギ)などという生きているのか死んでいるのか分からないような窓際族を経て、蝶々ならば誰もが振り向くようなスターへと変身する。
成虫はスターであるけれど、スターにはスターなりの悩みを抱える。スターはもはや成長することが出来ない。中には、生殖器官以外の体の器官が退化してしまう昆虫もいる。口さえも退化してしまう種類もいるというのには驚く。
ちょっと人間には当て嵌めて考えることの出来ないような腰の部分のクビレなどは退化の例だとか。
昆虫の残りの約25%はサナギの段階を通過しない不完全変態と呼ばれるものと、成虫になっても翅がない無変態というもの。
それでも、不完全変態にはトンボなどが含まれるから、華麗な変身と言えるだろう。

人が虫の華麗な変身を見て、自分に投射して憧れるのも無理はない。
しかし、虫と人とは決定的に異なる点がある。
人を含めて哺乳類、爬虫類、両生類、魚類では体の内部に骨があって、骨の周りに筋肉が付いている。これは内骨格という。
一方で、昆虫の場合は体の一番外側が鎧(ヨロイ)のような堅い構造になっていて、その堅い殻の内側に筋肉が付いている。これを外骨格という。
人間の場合は、肉のつき方というのは骨によって邪魔されたりしないから、限界はあるにしても、かなり外側にまで肉を付けることが出来る。つまり、どんどん太ることが可能。昆虫の場合は殻で覆われているので、そう簡単にはブクブクとは太ることが出来ない。
アニメで太った昆虫が出てくるのを見て、当の昆虫はニヤリとしているかもしれない。
太ろうと思ったら、外側の堅い殻を取り替えなくてはいけない。これが脱皮。
人間が太ったら、洋服のサイズを変えるように、昆虫の場合は体が大きくなってハチキレそうになると殻を取り替える。

人間は着替えることは出来ても脱皮は出来ない。
昆虫の華麗は変身というのは脱皮のなせる技でもある。ということは人間が昆虫のように華麗な変身というのは出来ないということ。
人間である以上は、少しづつ地道に変わっていくしかない。

<<一言主>>
○及第 きゅうだい
試験に合格すること。若い人に言っても通じないことが多くなってきている。

○落第 らくだい
試験に合格しないこと。あるいは失格という意味にも用いる。

○洛中 らくちゅう
京都の中。京都市内。もっとも、現在の京都市にはかつては京都には含まれていなかった地区が含まれている。

○洛外 らくがい
京都の外。京都市内の外なのか縁(へり)なのかは非常に微妙な問題を含んでいる。

○洛中尽くし [名詞」らくちゅう-づくし
京都の名所を紹介した書籍などのこと。絵や写真が中心で文章は添え物であることが多い。京都以外から来た観光客が持ち歩くガイドマップ。こうしたガイドマップのお蔭で京都以外の人々が京都の人以上に京都通になるという事情は今も昔も変わりない。

○洛中払い [名詞]らくちゅう-ばらい
江戸時代に行われた追放刑の一つ。京都から追い出すこと。刑罰としてではなくても、居たたまれなくなって、自らを洛中払いにする場合も稀にあり。

This page is powered by Blogger. Isn't yours?