コンドラチェフ循環
コンドラチェフはイギリス,アメリカ,フランス,ドイツの物価,利子率などの動きを綿密に調査した結果,シュンペータによってコンドラチェフの長期波動と命名されることになる経済循環を発見する.第1波の上昇期は1785年から1814年までの25年間,下降期は1814年から1849年までの35年間であり,全循環は60年.第2波の上昇期は1849年から1873年までの24年間であり,下降期は1873年から1896年までの24年間,全循環48年.第3波の上昇期は1896年から1920年の24年間,下降期は1920年始まるとされた.コンドラチェフの論文の対象期間は1920年までである.この長期波動の理論は,当時のスターリン体制のもとで机上の空論とされ,なおかつ当時の国家理論とは相容れない理論として,反革命の烙印を押され,本人とともに葬り去られた.
しかし,その後も,資本主義に在庫循環や設備投資循環を超えた長期経済波動が「事後的に」確かに存在することが改めて確認されている.とはいえ,長期波動の原因がどこにあるのかに関しては百家争鳴の状態である.有名なものには,技術の発明と発見,金鉱の発見による金の増産それに軍事費の支出に求めるものがあるが,技術革新がとくに重要とする説をシュンペーターは唱えている.
もちろん,経済が生身の人間の活動から構成される以上,過去の循環傾向が今後も無条件に継続することは到底考えられない.この点が,この長期波動の理論が多くの人にとって魅力的でありつつも,ひとつのお話に留まっていた原因がある.ひとつのお話ではあるものの,90年代前半が新たなサイクルの開始点になっていることによって,再び関心を惹いている.米国において,一時期言われたニューエコノミー論を唱えた人々の心の奥底においても,この長期波動の理論がわづかとはいえ影響していたことは想像に難くない.
米国における長期景気循環 (出所:Alexander Mike)期間 | Type | GDP成長率 | 賃金上昇率 | インフレ率 | 実質株価収益率 |
1787-1806 | インフレ成長期 | +6.1% | +0.5% | +2.3% | -- |
1806-1814 | スタグフレーション | -1.3% | -3.4% | +5.1% | 2.5% |
1814-1836 | デフレ成長期 | +6.4% | +3.7% | -3.5% | 8.2% |
1836-1843 | 不況期 | 2.1% | +4.0% | -2.6% | 2.6% |
1843-1853 | インフレ成長期 | 6.5% | +0.5% | +0.5% | 9.2% |
1853-1864 | スタグフレーション | -0.7% | -1.0% | +4.7% | 3.6% |
1864-1881 | デフレ成長期 | +7.1% | +1.5% | -1.5% | 10.1% |
1881-1896 | 不況 | +3.0% | +1.9% | -1.3% | 3.6% |
1896-1912 | インフレ成長期 | +4.6% | +0.6% | +1.6% | 8.0% |
1912-1921 | スタグフレーション | -0.3% | +2.4% | +6.8% | -4.5% |
1921-1929 | デフレ成長期 | 5.7% | +1.7% | -0.4% | 25% |
1929-1954 | 不況 | +2.0% | +3.0% | +1.7% | 1.0% |
1954-1973 | インフレ成長期 | +4.0% | +2.3% | +2.7% | 9.9% |
1973-1982 | スタグフレーション | +2.3% | -1.0% | +8.8% | -2.9% |
1982-present | デフレ成長期 | +3.5% | -0% | +3.3% | 15.0% |