K-19

不吉な予兆というのはあるもの。それを迷信と片付けてしまうのは簡単。しかし、当事者にとっては迷信として片隅に追いやることは出来ない。この映画の冒頭に続く不吉な予兆は、現実のものとなって全編を貫いていく。
冷戦時代という背景の中で、威信を掛けたミサイル打ち上げ演習のために起用された新しい艦長(ハリソン・フォード)と前艦長であり乗組員からの信頼の厚い副艦長(リーアム・ニーソン)の対立もまた予兆の一つとしてある。その中での、原子炉の不調。原子炉の冷却に失敗すれば乗組員全員の命が危ない。しかも、原子炉の責任者は新任艦長によって新たに任命された人物。悪い予兆は現実化していく。
乗組員全員の命を救うために、危険と分かっている場所に部下を行かすことが出来るか。それも、危険であるということを顔には出さずに。ここに、組織のリーダーのありようの究極の姿がある。
だからこそ、艦長と副艦長が対立しつつも、艦内で起きた叛乱劇に際して副艦長が艦長の側に立ったと言える。そこには、表面的な方針の違いはあっても、同じくリーダーとしての資質を認め合う男同士の姿がある。
映画は1961年に実際に起きたソ連の原子力潜水艦の事故の実話を基にしているという。
それだけに、最後に乗組員達が墓地で再会するシーンに映画であるということを忘れそうになった。

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