[仁右衛門島・神楽岩]
 南房総鴨川太海浜に浮かぶ約3万平方メートルの島。この島の歴史は古く、源頼朝や日蓮聖人の伝説で知られる。島名の仁右衛門は、島主の平野仁右衛門一族が一戸だけ住んでいることに由来する。
 治承4年(1180年)、石橋山の戦に敗れた源頼朝はここで暫く関東の平家軍から身を隠し、劣勢となった体勢を整え、東国への巻き返しを図ったと言い伝えられる。この時、叛乱軍の将たる頼朝を匿った平野一族に、この島一帯の漁業権を与えた時から今に至るまで平野仁右衛門一族がこの島を守り伝えている。

[仁右衛門島から対岸を望む・見晴らし台]
 対岸は南房総鴨川太海浜。
 ここから手漕ぎ船により、仁右衛門島に渡る。
 泳いでも行けるほどの距離だ。
 この太海浜には、多くの猫達が潮の香りに遊んでいる。実に幸せそうな猫達である。
 この猫達も気合を入れて海を渡り仁右衛門島に渡るのだろうかと想像してしまう。が、もちろん、というべきか仁右衛門島では猫に出会うことは無かった。

[仁右衛門島に至る道]  

 海は道の先に僅かに覗くことが出来る。
 とはいっても、右に見える小さな小屋のすぐ横はもう仁右衛門島へと続く海だ。
 それが証拠に道にはどこか懐かしさを誘う潮の香りが漂っている。
 初めての武士の武士の手による全国政権を打ち立てた源頼朝もこの道を僅かな仲間とともに大きな野望を胸に北上したのだろうか。