田中英道教授による日本芸術史区分

縄文時代[プリミティブ] 5,800年前 - 3,000年前頃 土器、土偶、巨木文化
古墳時代[プレ・アルカイスム] A.D.200 - 500 頃 前方後円墳と埴輪の文化
飛鳥・白鳳[アルカイスム] A.D.600 - 710 頃 法隆寺の初期仏教美術
クラシシスム A.D.710 - 780 頃 仏教美術古典期、『万葉集』『古事記』『日本書紀』など
マニエリスム A.D.950 - 1010 頃 『源氏物語』等の宮廷マニエリスム文化
バロック A.D.1150 - 1300 頃 鎌倉バロック美術、『平家物語』等の武士文学
ロマンティシズム A.D.1450 - 1600 頃 中国浪漫主義、桃山建築
ジャポニスム A.D.1760 - 1850 頃 元禄文化などの町人文化
近代 A.D.1867 - 1945 頃 西洋文化の吸収と日本の自覚
現代 A.D.1945 - アイデンティティー喪失の時代

田中英道教授は日本の芸術史を政治史的時代区分から離れて西洋美術史で用いられてきた「様式」の変遷に着目した歴史区分を提唱されている。
鎌倉時代に開花したバロック芸術は武士階級が台頭し実権を握ったという時代背景で、マニエリスム期の知的かつ洗練度が向上しかえって技巧的になった芸術をダイナミズムや写実性、装飾性で克服する。このバロック期の装飾性が更に発展し、装飾性だけが目立つようになるのが西洋でいうロココ期。フランスでは、このロココ芸術がロマンティシズムそして印象派へと繋がり現代美術へと発展していく。
日本では中国絵画の日本的模倣という形でも中国浪漫主義に移り、それが行き詰ると様式から解き放たれたジャポニスムが興隆したとする。
面白いのは、中国ロマンティシズムからの揺り戻しとも言える江戸期の文化と西洋文化との接点に関する考察。
「江戸美術」すなわちジャポニスムを、17世紀の宗達・光琳派美術、18世紀の文人画美術、18世紀後半から19世紀の浮世絵美術に分けます。
そして、宗達・光琳派美術は「アールヌーヴォー」に、文人画を「印象派」に擬えます。
最期の浮世絵は実際に西洋美術に大きな影響を与えたことは言うまでもないでしょう。
また、イタリアに固有の特色を持つ美術が出現するのが12世紀頃であるのに対して、日本における様式展開、アルカイスムの出現が7世紀であり500年も先駆けていたとの指摘は新鮮であると同時に傾聴に値すると言えるでしょう。