ティントレット、「聖ジョージとドラゴン」


シエラ・レオネ(2003)、サンクト・ペテルブルグ建都300周年
ティントレット[Tintoretto,Jacopo Robusti](1519-1594)

聖ジョージあるいは聖ゲオルギウス。サン・ジョルジュと言えば書店で馴染みがあろうか。そもそもは東方正教会の守護聖人。
十字軍を契機として西ヨーロッパに持ち込まれヴェネチアなど諸都市の守護聖人とされた。1222年にはイングランドの守護聖人に、後にはガーター騎士団の守護聖人として崇敬を受ける。
聖ジョージは西暦263年にカッパドキアに生まれ、4分割統治を始めたローマ皇帝ディオクレティアヌス(Gaius Aurelius Valerius Diocletianus、245-313、在位:284-305)の下で騎兵として仕える。
皇帝のキリスト教迫害に強く反対したために、3世紀末にパレスティナのリッダで斬首されたという。
聖ジョージに関してはドラゴン伝説が主題となることが多い。
現在でも、米軍で陸軍で歩兵以外の軍種によって構成される歩兵部隊をドラゴン(龍騎兵)と呼ぶように、ドラゴンは強さの象徴。と同時にキリスト教では異教徒の象徴でもある。
そのドラゴンがアフリカ大陸のリビアはサレムの町でひと暴れ。遂には王女が生贄にならなければならない状況に陥った。
そこで、立ち上がってドラゴンを退治したのが聖ジョージだとされている。その王女と聖ジョージは結ばれたというから、須佐之男尊(スサノオ)による八岐大蛇(やまたのおろち)退治を彷彿とさせる。
八岐大蛇伝説では、足名椎命、手名椎命夫婦の娘達が毎年犠牲になり、末娘の櫛名田比売の時に須佐之男尊(スサノオ)の登場と相成る。そして、須佐之男尊(スサノオ)と櫛名田比売が結ばれる。
聖ジョージの伝説は、当初はカッパドキア征服の物語であり、そこに13世紀のいわゆる黄金伝説が加味されることで、リビアはサレムの町を舞台とした物語へと発展していったと考えられている。