狐松図

八大山人[Bādàshānrén]こと朱耷[Zhu Da:1626/1705]による作品.

朱耷は明[1368/1644]の王室である朱家の一族である石城王の血をひく.明は,崇禎帝[朱由検]が後金軍の策略に嵌り,諸葛孔明の再来とまで言われた袁崇煥将軍を処刑すると,清軍の猛攻になすすべを無くしていく.

1644年には李自成が挙兵し王宮を包囲.崇禎帝の自害によって明は事実上滅亡.李自成は,西夏の初代皇帝李元昊の祖父である李継遷[963/1004]の子孫を称し,順[1644/1649]を建国した.

北京陥落の知らせを受けた明軍の平西伯であった呉三桂[Wú Sāngu:1612/1678]は,李自成を討つために,それまでの敵であった清の第3代皇帝世祖・順治帝配下のドルゴン[多爾袞][1612/1650]に降伏し,北京に進撃し李自成を討ち取った.

こうした時代に生まれた朱耷は名門でありながら波乱万丈の人生を送った.一時は仏門に入ったが,これも,清による明王室の一族への追及を避けるためだと考えられる.八大山人という号も清への屈折した思いがあるとされる.