適応的変化と遺伝
「ガンのひなは、水中で丈を低くして体を伸ばしている自種の仲間と交尾すべきだということを「本能的に知って」いますが、自種の仲間がどんな姿なのかは学習しなければなりません。しかしこのような調整はすべて、すくなくとも、ほとんどあるいはまったく変化する可能性のない他の要素と同じくらい、遺伝的青写真に含まれる情報をその前提としています。いいかえれば、適応的変化の能力を可能ならしめる装置それ自体が遺伝的に設計されたものであり、そして、その器官が、胚発生にみられるような範囲の調整を許すばあいには、とくにきわめて複雑なかたちのものとなっているのです。」
コンラート・ローレンツ『行動は進化するか』
コンラート・ローレンツ『行動は進化するか』
遺伝による行動と学習による行動は全く別の対立するようなものではないと。そういうことになります。個体が試行錯誤で行動している、つまり学習している場合であっても、その根底には遺伝が潜んでいる。こう言ってしまうと、全ての行動というのは遺伝で事前に決められていて、個人の努力である学習によっては変えるなんてことは出来ないように思えてしまう。しかし、決められているのは基本的な事柄であるということ、更には、行動には遺伝的な要素と学習的な要素とが混在しているというのが実際であって、どちらか一方だけが重要な役割を担っているなんてことはないと考えられています。