『ジェイムス・ロスチャイルド伯爵夫人』
1848年のジャン=オーギュスト=ドミニック・アングル(Jean-Auguste Dominique Ingres;1780-1867)の作品。アングルは7月王政期のフランス・アカデミズムを担った新古典主義の画家。ダヴィッドに続くフランス新古典主義の第2世代と言える。師でもある第1世代のダヴィッドが熱烈な理想主義の色が強かったのに対して、アングルは貴族階層の婦人の肖像画を得意としたように女性的な柔らかさで新古典主義を飾った。ナポレオンの主席画家で第1世代のダヴィッドはナポレオンの失脚とともに舞台からは去った。7月王政はナポレオン失脚後、ルイ18世、シャルル10世のブルボン家による反動的復古王政に反発したブルジョア層がオルレアン公ルイ・フィリップを国王とし政権を打ち立てたもの(1830-)。しかし、非ブルジョア層による1848年の2月革命で第二共和制が成立し終焉した。一方で、アングルはナポレオン3世の第2帝政末期まで保守階層の強い支持を受け新古典派の第一人者であり続けた。