『マグダラのマリア』
マグダラのマリアというと目下世間を騒がせている『ダ・ヴィンチ・コード』ですっかり有名に。キリスト教美術ではマグダラのマリア(Mary Magdalene)は懺悔の象徴とされている。これは「ルカ福音書」にあるキリストの足に油を塗る女性とキリストに7つの悪霊を追い出してもらい磔刑にも立ち会ったというマリアとの混同から生じたもの。この2人のマリアは同一人物とも違う人物ともされる。ともかく、画題としてのマグダラのマリアは改宗する前のマリアと改宗後のマリアの2種類がある。この絵の場合は飾りを付けていない質素は白い服を特徴とする後者。ほとんど裸と言ってもいいようないでたちもその特徴のひとつ。また、悲しげな表情で天を仰ぎ見るという構図はバロック的な流れを汲んでいる。さて、このマグダラのマリアは実はキリストと結ばれていて、子を宿し、晩年はその子とともにフランスのサント=ボームの洞窟に隠れ住んだとも云われ洞窟を思わせる背景が描かれることもある。史実はどうだったのか、それは想像するしか今はない。
エルミタージュ美術館蔵の盛期ルネサンス期に最も活躍したヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノ(Tiziano Vecellio[1488-1576])の作品。