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6月3日(月曜日)旧暦4月23日、壬寅、友引
[石橋君] 「えーと、昨日の金沢さんの件なんですが」
 「続きがあるの?それとも何か問題があった?」
[石橋君] 「というか、金沢さんがその親御さんから譲受けた不動産の売買契約を取消した後に、秋河さんが豊嶋さんに売り払ったそうなんです。ですから、昨日話したのとは少し状況が異なるわけです」
 「そうなると、取消後の第三者には96条3項は適用されないからね。というのは、取消後の第三者は、単なる無権利者と取引をしているにだけだから。すると、第三者の豊嶋さんだったっけ?は一切保護されないようにも思えるね」
 「そうだとするとよ。取引の安全を害することになってしまって妥当でないわ。
それに、取消の遡及効は法的擬制に過ぎないでしょ。実際には取消がなされた時点で、被詐欺者への復帰的物権変動を観念しうるということになるわけね。とすると、詐欺者を起点として二重譲渡類似の関係となるわ」
 「で、本人と第三者との優劣は登記の具備の先後で決するのが妥当となるわけだ。だから、金沢さんと豊嶋さんとどっちが不動産の所有権を主張できるかってことは、どっちが登記の具備をしているかってことによることになるね」
6月2日(日曜日)旧暦4月22日、 申丑 、先勝
[石橋君] 「金沢洋子さんからですが、金沢さんが自己所有の不動産、これは親御さんから譲り受けたおよそ100平米の土地なんだそうです、これについてですね、遠縁にあたる秋河という人と売買契約を結んで引渡したんだそうです。親御さんは10年前に他界されていて、金沢さんも別の離れたところに家を構えていたので、そのままになっていたようです。で、そうはいっても、金沢さんにとっても小さいころを過ごされた土地ですから売る気持ちはなかったようなんです。でも、秋河さんは金沢さんのところにやってきて、その土地がなにやら今度新しく出来た法律によって普通には利用できなくなるようななんだかそんな複雑なことを言ったそうなんですよ」
 「ところがそんな事実は全くなかった」
[石橋君] 「その通りです。ひどいものです。それで、金沢さんは秋河さんとの売買契約を取り消したそうなんです。ですが、全てはあとのまつりで、秋河という人は、こういうところは頭がいいのですねぇ、既にその土地を別の豊嶋さんという人に売り払ってしまっていたんだそうです」
 「金沢さんはその契約を秋河さんの詐欺を根拠に取り消している(96条1項)よね。取消の場合、その効果は遡及的無効だから(121条)、金沢さんは豊嶋さんに不動産の所有権を主張して不動産の返還請求をなするということが考えられるね」
 「でも、豊嶋さんも、96条3項によって、かかるAの請求に対抗することが考えられるわね。自分は『善意の第三者』ですって。そうすると、豊嶋さんが第三者に当たるのかどうか、つまり「第三者」(96条3項)の意義が問題となるわけね」
 「96条3項の趣旨っていうのは、詐欺取消の遡及効というものを制限し、権利を有効に取得できると信頼した第三者を保護する点にあるわけだ。ということはだよ、『第三者』というのは、当事者とその包括承継人以外の者で、詐欺によって作出された法律関係を前提として利害関係を持つようになった者をいうというべきだね。つまり、取消前の第三者」
 「ということは、この豊嶋さんはまさにその『第三者』にあたるわね。でもよ、無過失ってことは関係ないのかしら?不動産なんだから良く調べれば分かりそうじゃない?つまり、『善意』(96条3項)は善意に加え、無過失まで要求するのかっていう..」
 「うん、条文上は善意としかないよね。それに、どうだろう、確かに金沢さんも気の毒だけど、豊嶋さんも被害者だよね。どっちを保護すべきかってことになると、豊嶋さんには何らの落ち度がないわけだから、第三者の豊嶋さんを保護すべきということになるんじゃないかな」
 「それから、この場合、不動産だから登記の問題もあるけど。詐欺を理由として取消をする金沢さんと取消される相手の豊嶋さんとはいわゆる前主後主の関係になるから、豊嶋さんには登記は必要ないね」
[石橋君] 「ということは、豊嶋さんが金沢さんが秋河さんに騙されたっていうことを知らなかった場合には、豊嶋さんが土地の所有権を主張できるってことになるんですね」
6月1日(土曜日)旧暦4月21日、庚子 、赤口
[石橋君] 「さっき、すぐそこのスーパーで万引きをしたらしい主婦が警備員に取り押さえられていましたよ。なに、別に僕は万引きの瞬間を見たわけでではないんですけど。夕飯にカレーでも作ろうかと思いまして。通信販売で家庭用寸胴銅鍋を買ったんですよ。それを使ってですね、丸ごとのセロリとブーケガルニ、ターメリックを入れて野菜ジュースを加えてですね。というわけでして、スーパーに出張ったわけなんです。そうしたらそうしたわけでして。捕まえた警備員のほうも、格好がなんだか刑事さんみたいでしたね。忠別東署の常盤さんをもっとがっちりさせたような。逮捕するぞっていうようなことも言っていましたけど...あれって警官じゃないといけないんじゃないんですか?」
 「逮捕というのは、被疑者の身体の自由を拘束し、引続いて短時間拘束の状態を続けることだね」
 「被疑者の身柄の確保は、この逮捕勾留という2つの強制処分によってなされるわ」
 「逮捕には3つの種類があるね」
 「@通常逮捕、A緊急逮捕そしてB現行犯逮捕
 「@とAは令状が必要だわ(憲法33条)。@通常逮捕とA緊急逮捕との違いは、@通常は逮捕の前に令状が必要だけれども、A緊急逮捕の場合は逮捕の後に令状が必要とされる点」
 「そうね」
[石橋君] 「なるほど、現行犯なら一般市民でもオーケーってわけですか」

5月31日(金曜日)旧暦4月20日、己亥、大安
『主権の意味』
[石橋君] 「国民主権主権ていうのは、つまり国政を最終的に決定する権利ということですね」
 「国政の最終決定権のことね」
[石橋君] 「で、一体何を最終的に決定するんですか?何でも決めていいのかな」
 「えーと、憲法が制定されたときには権力的契機からなるものと考えられているのね」
 「制憲権ね。この制憲権は憲法が制定されると憲法の中に制度化されてしまうんだ」
[石橋君] 「とすると、権力的契機ではないと」
 「というか、その権力的契機は正当性の契機と憲法改正権に転化された考えることが出来るんだ」
 「正当性の契機というのは、国家の権力行使を正当づける究極的な権威が国民に存するという意味ね」
 「この点は、日本国憲法で権力は代表者が行使するとされ、唯一の立法機関は国会とされている(前文1段41条)ことにも表れているよ」
[石橋君] 「すると、日本国憲法における国民主権というのは権力的契機ではなく正当性の契機ということですね。つまり、何でも決められるというわけではない」
 「権力的契機は例外的にしか認められないわね」

5月30日(木曜日)旧暦4月19日、戊戌、仏滅
[石橋君] 「『法の支配』とか『法治主義』というのは似て非なる概念ですよね。上手く説明できないですけど」
 「『法の支配』というのは『法』の内容が国民の人権を守るものであることが必要であるとして、『法』によって権力行使を制限しようとするわけ」
 「『法治主義』というのはドイツ立憲君主制で発展したもので、国家作用が行われる形式あるいは手続を示すにすぎないんだ。だから、どんな政治体制とでも結びつく」
 「法の内容を問わないわけね」
 「これに対して、『法の支配』は国民自身が立法に参加して自らの自由を守るという自由主義的民主主義と結びつく」
[石橋君] 「大きく違いますね」
 「でもね、違憲立法審査制が導入された実質的法治主義と言われるものを採用している戦後ドイツでは、法治主義と法の支配は同様の内容となっているといえるわね」
5月29日(水曜日)旧暦4月18日、丁酉、先負
[石橋君] 「未成年者の小早川秀秋君が詐術を用いた場合に、騙された大谷さんは詐欺を理由とする取消(96条)と不法行為を理由とする損害賠償請求(709条)を出来るんでしょうか?」
 「歴史がひっくり返るなぁ、これは」
 「つまり、20条の『詐術』には、積極的な欺網手段を用いて自己を能力者であると相手に信じさせるという行為も含まれるけど、そういう行為は96条の詐欺にもあたるのではないかということね」
 「歴史がひっくり返るなぁ、これは。そういうのありかな?」
 「96条の詐欺っていうのは効果意思の形成に向けられた欺網である必要があるわね」
 「でも、20条でいうところの詐欺は行為能力があるかないかについての詐欺だ」
[石橋君] 「当然に96条の詐欺に当たるわけではないということですね」
 「そうね。だけど、能力者である「ことが契約の重要な内容となっているというようなケースでは20条にいう詐術が取引の相手方の意思決定に重大な景況を与えていると考えられるわね」
 「96条による取消が認められる余地があるということだね。ここで、注意しておかなければいけないのは、20条っていうのは期待通りの取引を継続させて相手方の利益を保護するものであるのに対して、96条は相手方の正当な利益の保護を目的として契約を取り消させるものであるという点かな」
5月28日(火曜日)
制限超過利息を支払った場合に、余分に払った部分はどうなるのでしょうか?(山形県在住、最上義光さん)

[石橋君] 「制限超過利息を支払ったというケースにおいては、超過している部分は無効になりますね」
 「そうすると」
[石橋君] 「利息制限法1条2項4条2項で返還請求権は認められませんね」
 「だから」
[石橋君] 「法定充当(民法419条)によって制限超過部分の利息は元本に充当されますね」
 「その結果、元本を超えてしまった場合はどうなるのかな」
[石橋君] 「返還請求はできないから....」
 「元本が無くなってしまったあとは利息は発生しないことになるわね」
 「非債弁済ということになるね」
[石橋君] 「とすると、それを知らずに弁済した場合は不当利得返還請求(民法703条)が可能となると思うのですが」
 「そうね」
 「とすると、利息制限法1条2項が既払利息の返還請求を認めていないことはどう考える?」
 「そこね。利息制限法1条2項は元本が存在していることを前提にした規定と考えるべきだわ」
 「元本が無くなったというケースでは適用されないわけだね」

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