古代エジプト美術

古代エジプト美術は王家の宮廷美術として上下エジプトを統一した初期エジプト王国時代(BC3100-)に始まり、様式をそのままに保ちながら約3000年にわたって続いた。マスタバ形式墓、丸彫彫刻なども、この時代を起源としている。

宮廷美術の制作は集団で行われたために、何よりもまず前例に則した伝統の保持が最優先された。この辺りの形式の重視は江戸時代の狩野派のようでもある。ともあれ、このような具合であったから、エジプト美術が周辺諸国に影響を及ぼすというのも限定的な範囲に留まった。僅かに、第12王朝時代(BC1991-1786)にクレタ美術との交流の痕跡が認められるに過ぎない。

また、極めて保守的な様式であったために、末期王朝時代(BC1085-322)にギリシア美術に影響を及ぼしたものの影響は比較的小さいものに留まった。

とはいえ、約3000年に及ぶエジプト美術の道程が単純なものであった訳では決して無い。ファラオの権力が確立した第3王朝から第6王朝に至る古王国時代(BC2686-2181)には巨大なピラミッド建設の中で緻密な写実と理想化が追求され極めて個性的な美術が伝統の枠組みの中で展開されていた。


This page is powered by Blogger. Isn't yours?