20世紀美術

20世紀美術の特徴は、ルネサンスで完成された数学的遠近法の解体。解体されたのは、遠近法だけではない。ピカソやブラックは遠近法と共に陰影法をも消し去った。影が無くなったのである。更にモンドリアンに始まる抽象画は絵画の写実性をも解体した。それまで、ほぼ直線的に歩んできた西洋美術はその蓄積を崩し去り出したと言える。そして、決定打は1909年のマリネッティによる『未来派宣言』。美術の大衆性と文化人類学が紹介した非西洋文化の積極的評価と現代技術の称揚。この矛盾に満ちたものに共に『美』を見出したのである。

この解体的運動の中にあっても絵画は絵画であり、彫刻は彫刻の範囲に留まったが、それさえもデュシャンによるオブジェの創出によって絵画でも彫刻でもない、それまでにない新しい芸術領域が誕生した。

伝統的な藝術の解体は1920年代になると反動期を迎える。全てを解体してしまっては『美』のフレームからはみ出してしまう。この事実は重要で、殊に、20世紀美術が大衆を対象としていたという事実に照らすと墓穴を掘ることに繋がる。キリコのような形而上派の絵画の影響を受けたシュルレアリスムでさえも、捨て去ったはずの遠近法が復活している。この流れの中に、ミロ、マグリット、デルヴォーなどがいる。


This page is powered by Blogger. Isn't yours?