《総論》
●刑法の意義と機能  
刑法理論  
主観主義と客観主義
●刑法の基本原則  ●刑法の適用範囲


《犯罪論》
□犯罪の概念
□構成要件
●構成要件の概念
因果関係
客観的相当因果関係説
条件説 純粋条件説 「その行為がなかったならば、その結果は生じなかっただろう」という条件関係があれば因果関係を肯定。
中断説 「その行為がなかったならば、その結果は生じなかっただろう」という条件関係+自然的事実 or 故意に基づく行為が介在した場合には因果関係は中断。
原因説 (1)最終条件説(Ortmann オルトマン)
(2)異例行為原因説(パール)
(3)最有力条件説(Birkmeyer ビルクマイヤー)
(4)優勢条件説(Binding ビンディング)
(5)動的条件説(コーレル)
なんらかの基準で原因を突き止め、その原因と結果との間にだけ因果関係を肯定。
相当因果関係説 主観的相当因果関係説[主観説] 行為者+行為者が行為当時の認識しえた事情
折衷的相当因果関係説[折衷説] 行為者+一般人が行為当時の認識しえた事情+行為者が行為当時の認識しえた事情
客観的相当因果関係説 裁判官+客観的存在しえた全ての事情
実行行為
未遂

□違法性
違法性の概念  ●違法性阻却事由
□責任
●責任の概念  ●責任の要素
□共犯
共犯の概念と共犯の形態
最広義の共犯2人以上の者が共同して犯罪を実現するすべての場合。⇒修正された構成要件
広義の共犯=共同正犯(§60)+教唆犯(§61)+従犯(幇助犯)(§62)
狭義の共犯教唆犯(§61)+従犯(幇助犯)(§62)
任意的共犯共同正犯(§60),教唆犯(§61),従犯(幇助犯)(§62)
必要的共犯=対向犯+多衆犯
●共犯の問題
 『正犯と共犯の区別』
@正犯=結果と条件関係ある行為をなすもののうち、自己の手により実行するもの。+正犯者としての故意
Aこれと同視しうるもの=間接正犯とするべき。
 『共犯の本質・処罰根拠』
@刑法の機能=法益保護。
A処罰根拠=正犯を通じて法益侵害・危険を惹起。
B行為の結果に対する因果関係必要⇒共犯従属説。
 『実行従属性と罪名従属性』
@実行従属性⇒必要
A罪名従属性⇒共犯処罰のためには、構成要件の重要部分を共同して行えば十分だから、罪名まで一致するという必要性はない。
 『共同正犯の処罰根拠』
@共同正犯⇒物理的共同+共犯者相互間に心理的影響を及ぼし合い結果発生の蓋然性を高める。=一部実行全部責任の原則の根拠
A⇒共同実行=意思の連絡の存在+実行行為の分担。
B全員が構成要件を実現することまでは必要なし。
 『共謀共同正犯』
@[問題点1]共謀共同正犯⇒処罰する必要性はあるとしても、謀議にしか参加していない者を共犯として処罰するのは主観・心理的事情を罰することになるのではないか?
A[問題点2]共謀者のうちの誰かの実行行為の存在だけで処罰できるのか?
B共同正犯の処罰根拠⇒共同共謀正犯も処罰すべき。
C正犯としての意思+実行と評価できるだけの共謀関係が必要。
 『承継的共同正犯』
@[定義]先行行為者が、既に実行行為の一部を終了した後、後行行為者が関与する形態の共犯。
A共犯としての処罰⇒行為と結果と間に因果関係が必要。
B後行行為者は先行行為者の行為に関して因果関係を持つということは考えられない。
C承継的共同正犯は、後行行為者が先行行為者の行為に因果関係を持つという場合以外は否定すべき。
 『過失の共同正犯』
故意処罰の原則の例外を認める特則はない。⇒過失の共同正犯は認められない。
 『予備の共同正犯』
@たとえ、予備行為であっても、法益侵害の危険性を惹起したことは否定できない。
A共犯処罰=政策的意味が強。⇒限定的に考えるべき。
 『片面的共同正犯』
@[定義]片面的共同正犯=共同実行の意思が一方にしか存在しない場合。
A一部実行全部責任の核心部分は=意思の連絡⇒片面的共同正犯は認められない。
B但し、片面的教唆と片面的幇助については、意思の連絡は不要であり、一方的な意思であっても、結果として正犯を通じて法益侵害の危険性を惹起させているということが出来るから、認められる。
 『再間接教唆・幇助は処罰されるのか』

□罪数論
●罪数論の意義 ●本来的一罪=形式的に数罪にあたるかに見えても、刑法的には一罪で評価される場合。
●科刑上一罪 ⇒ 観念的競合=一個の行為にして数個の罪名に触れる場合。
   ●併合罪=科刑上一罪とならない数罪および確定裁判を経ていない数罪。


《刑罰論》

□刑罰の概念
□刑罰の適用
法定刑とその修正  刑の量定/言渡しと免除
□刑罰の執行
□保安処分


《個人的法益に関する罪》
□生命・身体に対する罪
人の意義

分娩開始説(ドイツ通説)分娩の開始をもって人の始期とする。
一部露出説(大判大8.12.13、日本通説)胎児の身体の一部が母体から露出した時期をもって人の始期とする。
全部露出説(日本民法通説)胎児の身体の全部が母体から露出したことをもって人の始期とする。
独立呼吸説胎児が自分の肺で呼吸を開始した時をもって人の始期とする。

呼吸停止説呼吸が不可逆的に停止したときをもって人の死とする。
脈拍停止説脈拍が不可逆的に停止したときをもって人の死とする。
総合判定(3徴候)説@呼吸、A脈拍の不可逆的停止+B瞳孔反応消失
脳死説 脳死した時点をもって人の死とする。
[参考]「臓器移植法」(H9.6)
殺人の罪(199条 - 203条)
 『自殺関与罪の実行の着手時期について』
@承諾・同意殺人罪(202条後段)⇒実際の殺害行為の開始時=実行の着手
A自殺関与罪(202条前段)⇒教唆・幇助の時点=実行の着手
B[反論]共犯従属性説⇒自殺者が自殺行為着手の必要?+同意殺人との均衡
C自殺≠犯罪。⇒自殺関与罪は,61条・62条の教唆・幇助とは全く別個に,他人の死の原因を作る行為を独自に処罰。
無理心中殺人罪となることに争いなし。
偽装心中。詐欺・脅迫・威迫による心中。殺人罪となるかについては争いがある。
合意による心中殺人罪となるかについては争いがある。

殺人罪説(最判昭33.11.21)被害者の錯誤を利用した間接正犯とする。
自殺教唆罪説(平野、前田)教唆になる。
二分説(大谷)実行行為について、錯誤を利用して被害者を自殺に追い込んだと評価できる場合には殺人罪とする。
 『偽装心中の罪責について』
@被害者が「死ぬこと」を認識⇒普通殺人成立せずでは形式的
Aしかし、本当のことを知っていたら普通殺⇒行き過ぎ
B錯誤の重要性によって決すべき
C処分される法益たる自己の生命に直接関連する事項の錯誤⇒199条成立
D追死≠生命に直接関連する事項⇒偽装心中=自殺教唆罪(202条)
名古屋高判昭37.12.22による安楽死の要件
@病者が現代医学の知識と技術からみて不治の病に冒され,しかもその死が目前に迫っていること。
A病者の苦痛が甚だしく,何人もこれを見るに忍びない程度のものとなること。
Bもっぱら病者の死苦の緩和の目的でなされたこと。
C病者の意識がなお明瞭であって意思を表明できる場合には,本人の真摯な嘱託または承諾のあること。
D医師の手によることを原則とし,これにより得ない場合には医師により得ないと首肯するに足る特別な事情があること。
Eその方法が倫理的にも妥当なものとして認容しうるものなること。
傷害の罪(204条 - 208条の2)
●過失致死傷の罪(209条 - 211条)
●堕胎の罪(212条 - 216条)
遺棄の罪(217条 - 219条)

□自由・平穏に対する罪
逮捕および監禁の罪  脅迫の罪  略取および誘拐の罪  強制わいせつおよび姦淫の罪  住居を侵す罪  秘密を侵す罪

□名誉・信用に対する罪
名誉に対する罪  信用および業務に対する罪

□財産に対する罪
財産罪総説  窃盗の罪  強盗の罪  詐欺の罪  恐喝の罪  横領の罪  背任の罪  盗品等に関する罪  毀棄および隠匿の罪
財物は有体物に限るか? | 情報の財物性 |


《社会的法益に対する罪》
□公共の平穏に対する罪
騒乱の罪  放火および失火の罪  出火および水利に関する罪  往来を妨害する罪
□公衆の健康に対する罪
あへん煙に関する罪  飲料水に関する罪
□公共の信用に対する罪
通貨偽造の罪  有価証券偽造の罪  文書偽造の罪  印章偽造の罪
□風俗に関する罪
わいせつおよび重婚の罪  賭博および富くじに関する罪  礼拝所および墳墓に関する罪


《国家的法益に関する罪》
□国家の存立に対する罪
内乱に関する罪  外患に関する罪  国交に関する罪
□国家の作用に対する罪
公務員と公務所  公務の執行を妨害する罪  逃走の罪  犯人蔵匿および証拠隠滅の罪  偽証の罪  虚偽告訴の罪  職権濫用の罪  賄賂の罪